第82回天皇杯1回戦(12月1日 群馬県営 1:00キックオフ)

           モンテディオ山形vsFCホリコシ 
                  1−2

GK

櫻井 16

GK

井坂 1

DF

太田 3

DF

山村 2

鷲田 22

小川 3

内山 2

神田 4

依田 23

深田 5

MF

高橋 6

MF

木村 6

永井 8

菅野 7

井上 14

北原 10

鈴木 26

清水 8

FW

大島 9

藏川 10

根本 11

村田 11

後半1

23→小久保17

後半15

8→谷奥 19

後半15

9→酒井13

後半42

10→井上13

後半22

14→松田19

後半48

11→ダニロ

            決してフロックではない勝利

                               砂畑 恵

 前半4分でゲームが動いた。なんとJ2モンテディオ相手に切っ先を突き付けたのが、
格下のFCホリコシだった。ロングボールを受けた清水が、高速ドリブルで左サイドを駆
け上ってアーリークロス。フォアにいた村田がヘディングでゴールにねじ込んだ。

 群馬というと、ザスパ草津が全国区になっているが、名前こそ知られてはいないものの、
FCホリコシの実力は県内随一である。今年、関東社会人リーグに昇格を果し、来期から
1部・2部制となる同リーグで1部に在籍する権利を得ている。しかもチームの大方は出
場機会には恵まれなかったとはいえ、元Jリーガーで構成されている。FCホリコシのプ
レーを完結に表すと、スピーディーなドリブル突破とサイド攻撃。先制点のシチュエーシ
ョンはラッキーパンチなどではない。まさしくFCホリコシ得意の型で得点を奪ったのだ。

 だが、ボールポゼッションではモンテディオに分があった。前半も中盤になるとボール
が繋がって、FCホリコシ陣内でプレーをする時間が長くなる。ところが今年のモンテデ
ィオを象徴するかのように、パスやトラップのミスが多く、なかなかシュートまで持って
いけない。前半28分のモンテディオ最初の絶好機。グランダーのパスを受けた鈴木がDF
3人に囲まれながらも反転して打った鋭いシュートも、GK井坂のファインプレーに阻ま
れてしまった。

 守りの時間帯が長くなったFCホリコシではあるが、攻撃のチャンスとみるや気持ちの
切り替えが素早い。前半29分には清水のスルーパスに反応した藏川がGKと1対1という
場面を作る。GK櫻井がかろうじてゴールを死守。堅実な守りで我慢し、攻撃の機会を伺
いながら、FCホリコシはわずか1点のリードを守り切って前半を終えた。

 後半もモンテディオが試合を支配しながらも、決定的なシーンをFCホリコシが迎える
ゲームのペースは変らなかった。

 後半にモンテディオは次々と交代選手を送り込み、チームの活性化を図る。その成果が
出たのは3人の交代枠を全部使い切った後半25分のことだった。FCホリコシのお株を奪
うドリブルで根本がゴールに迫る。その根本のパスを受けたのが、ハーフタイムを挟んで
登場した小久保。思い切りのよいシュートで同点かと思われたがポストに嫌われてしう。
しかし流れは確実にモンティデオに傾いていた。同分、高橋のクロスを受けた小久保にま
たもシュートチャンスが巡ってくる。今度は豪快にFCホリコシゴールを貫いた。

 だが、このゴールの後、モンテディオに思わぬ落とし穴が待っていた。後半15分に投入
された酒井が一発レッドで退場。この退場劇については、後で詳しく述べたいのだが、と
もかく酒井はたった10分でピッチを退くこととなってしまった。これでモンテディオとF
Cホリコシの立場は完全に逆転した。

 数的優位に立ったFCホリコシは、ゲームに決着を付ける為、攻勢に出始める。ディフ
ェンシブハーフの木村から生きたボールが配給され、パスを受けた選手がモンテディオの
DFにスピード勝負を仕掛ける。更には後半42分に疲れの見える北原に替えて、フレッシ
ュな井上をピッチに送り出す。その井上はベンチの期待に応え、左サイドをかき回した。
その井上から繋がれたボールは弧を描いてフォアに構える谷奥へ。谷奥がダイレクトで横
に流したところを、フリーで待っていた村田が閃光を放つ。スタジアムに訪れた上州っ子
が歓喜に揺れたのは後半ロスタイムのことであった。

 今シーズン、何度かFCホリコシの試合を見ている者として、J2で調子が上がらなか
った山形に勝ったことは、なんらフロックでもなんでもない。普段通りの闘い方をこの試
合中でも実践し、その力を十二分に発揮した。FCホリコシのゴールはJばりの素晴らし
いゴールであった。

 ただこのことだけは触れておきたいと思う。それは酒井の退場についてである。同点に
追い付いたモンテディオが、ボールを拾ってセンターサークルへ持ち帰ろうと反撃に逸る
のは当然のことだった。こういう場面でボールを巡って両チームの選手が引き合いになる。
だが、得点を決められた側が相手へボールを素直には渡さないことはよくある。だがFC
ホリコシの選手は、複数で明後日の方向にボールを回し合い、最期は酒井がそのボールを
奪おうとしてごたごたが起きた。その際、FCホリコシの選手が倒れ、酒井はレッドカー
ドを提示された。けれど、スタンドから眺めていた私にとってその瞬間、場面こそ違うと
はいえ、W杯のブラジルvsトルコでトルコ選手が蹴ったボールが足に当たったはずのリバ
ウドが顔を覆って倒れたシーンが過った。。マリーシアという言葉が日本に浸透しつつあ
り、私も全てを否定するつもりはないが、選手は速やかにゲームを遂行する義務も負って
いるのではないだろうか。FCホリコシの快挙に、このことだけは私の心に小骨のように
引っかかったことも事実だった。