「ひまわり」

             ・イタリア映画 1970年作

             ・監督 ビットリオ・デ・シーカ

             ・出演 ソフィア・ローレン

                 マルチェロ・マストロヤンニ

 イタリア屈指の2大スター競演映画。

 長閑なナポリの海岸で戯れるジョバンナ(ソフィア・ローレン)とアントニオ(マルチ
ェロ・マストロヤンニ)は恋に酔う。だが、第2世界大戦の暗い影は、そんな二人に確実
に忍び寄っていた。
 予備兵役に登録していたアントニオに召集がかかる。残された時間は2週間。とり急い
で結婚し、兵役逃れの計画を労するも、その虚偽は軍の知ることとなり、アントニオは極
寒のロシア戦線に狩り出されて行く。そして時は流れ、終戦を迎えた…
 ところが愛する夫は帰っては来なかった。ジョバンナに届いたのは、アントニオの行方
不明の通知のみ。生死さえ解らぬアントニオを捜しに、ジョバンナは単身、ロシアへと旅
立つ決心をした。

 撮影当時、西側からの取材が難しいソ連にてロケを敢行。おびただしいイタリア兵の墓
標と、それを覆い尽くすように群生したひまわり。広大なロケーション現場が、繊細な内
容のストーリーに、ダイナミックなスケールを与えている。
 またソフィア・ローレン演じるジョバンナとリュドミラ・サベリーエワ扮するマーシャ、
二人の女性の哀しくも激しい葛藤と、失った時を取り戻すことの出来ない愛する男女の切
なさを、ヘンリー・マンシーニの調べが押し包む。

 ここで描かれるサッカーは、夫の消息を訊ねるジョバンナが訪れるモスクワのサッカー
スタジアムという形で登場する。「イタリア人とサッカー場で遭った」という話を知った
ジョバンナが、一縷の望みを抱いて足を運ぶのである。
 サッカーに興味がなかった頃この映画を見た際に、このサッカー場の件はストーリーに
なんら脈絡もなく唐突な印象を受けた。そしてこのシーンは、私の「ひまわり」観賞の記
憶から不必要な部分として抹消された。でも今ならこのシーンの大切さが解る。
 戦争のために、懐かしい祖国も愛する家族も、そして自分のアイデンティティすら失い
ながらロシアで生きようとも、唯一の心の拠り所であり捨て難いサッカーへの思慕。まさ
にそれこそがイタリア男の性なのではないだろうか。