「パトリオット・ゲーム」

            ・アメリカ映画 1992年作

            ・監督 フィリップ・ノイス

            ・出演 ハリソン・フォード
                アン・アーチャー

 日本の映画館で上映される海外映画は、ほとんどがアメリカのハリウッドで制作された
もの。スポーツ好きのアメリカ人らしく、スポーツに関した映画が数多く、それらを日本
でお目にかかる機会も少なくない。

 アメリカの人気スポーツは、野球、アメリカンフットボール、バスケット、それにアイ
スホッケー。当然、それらに関した映画は色々とある。

 野球なら、「ベーブ」や「打撃王」といった有名選手そのものを取り上げたものから、
ロバート・デニーロが常軌を逸した野球ファンを演じた「ザ・ファン」、天からの声に導
かれ、コーン畑を野球場にしてしまう「フィールド・オブ・ドリームス」など、野球をモ
チーフにした映画は枚挙に暇がない。

 アメリカンフットボールも、余命のない弟とフットボーラーの兄との交流を切々と謳っ
た「ジョーイ」や、キアヌ・リーブスがチームがストをした間だけ代役選手を務める「リ
プレイスメント」、また「パニック・イン・スタジアム」のように、パニック映画であり
ながらオールキャスト&1つの空間に集まる人々の人生を交差させる「グランドホテル」
タイプに描いたものもある。そういや、変わり所でダラス・カーボーイズのチアリーディ
ングの映画もあるっけ。

 バスケットに関しては、やや新し目の映画が多いのだが、ハリウッド切ってのコメディ
エンヌのウーピー・ゴールドバーグがバスケ監督をコミカルに演じた「エディ/勝利の天
使」や、「スペース・ジャム」ではワナー・ブラザーズの産んだアニメキャラクターのバ
ックス・バニーがNBAのスター選手のマイケル・ジョーダンとCG合成で競演した。

 アメリカンホッケーもポール・ニューマンがアイスホッケーの選手に扮した「スラップ
ショット」や、アイスホッケーを通じて成長するはみだし者の子供達の「飛べないアヒル」
というキッズ映画もある。

 しかしながら、アメリカに於けるサッカーというと、マイナースポーツである。W杯で
は決勝トーナメントに進出する実力はあり、女子サッカーは世界でも最も強い国の一つで
あるし、メジャーリーグサッカー移民層が多い地域にチームの本拠地を置いて人気を博し
ている。つまりどちらかと言えば女性とないしはヒスパニックなどの移民系のスポーツと
いった感が強く、万人受けしないことからも映画にはしにくい素材なのである。

 そんなアメリカ映画にもサッカーが登場する映画がある。ジャック・ライアンシリーズ
の第2弾「パトリオット・ゲーム」。第1作「レッド・オクトバーを追え」ではアレック
ボールドウィンが主役のジャックを演じていたが、ハリソン・フォードに変更しての最初
の作品でもある。

 CIAのジャックは家族とロンドン旅行中に、偶然、英国皇室関係者がIRAの標的と
なる現場に居合わせ、持ち前の正義感から救出に一役買う。それが後に、ジャック、引い
てはその家族に危険が迫るといった筋書きである。

 映画はロンドンから、北アイルランドのベルファストへと舞台を移していく。このベル
ファストは、漫画「マスター・キートン」でも、IRAの拠点であり、反英色も強く、英
国特殊部隊SASとの抗争が勃発する街として描かれている。

 IRAのアジトに英国特殊部隊が踏み込むシーン。屋外で子供達がサッカーに興じ、I
RAの戦闘員は爆弾を作りながら、ラジオより聞こえるサッカーの試合に耳を傾け、サッ
カー談義に花を咲かせる。

 この映画にサッカーが登場する理由は、物語の導入がロンドンやベルファストといった
イギリスの都市ということがミソ。アメリカ国内の話ならばサッカーなど歯牙にも掛けな
かったのではなかろうか。

 だが、アメリカ映画にあっても、イギリスらしさを演出するのには、サッカー風景が欠
かせなかったとみえる。

 実はノイス監督はオーストラリア出身。オーストラリアと言えば、こちらもサッカーに
は縁遠い国といった印象もなきにしもあらず。もしかしたらノイス監督はイギリス系のオ
ーストラリア人で、案外サッカー好きなのかもしれない。