第2回・FC東京の目指すもの(2000年1月30日)
文・M.Sunabata

 

 先日、FC東京常務取締役の村林氏をスピーカーとしてお迎えした、ある会合に参加し
た。この会合に集まったメンバーは、大学教授、会社経営者、広告代理店など職業が多岐
に渡っており、サッカーに詳しい人ばかりではなかったので、FC東京のチーム概要や理
念の話から、今後チームが展開しようとしている事業のことなど、幅広い内容の話を聞く
ことが出来た。この会合で村林氏が話された中で、殊に私個人が興味を引かれたことに付
いて、書いていきたいと思う。


 現在Jリーグに於いて、収支決算が黒字というチームは、一部のチームを除きないとい
うことである。つまり株式会社でありながら、 収益が出ていないのだ。そしてチームの赤
字 を親会社(50%以上の株を保有している会 社)が補填している。

 FC東京の場合、現在185の企業と団体が株主となっている。昨年のチーム運営費は
約9億で、チーム収入との関係はおおむねイーブンということだ。その点を考えれば、他
チームと比較すると、健全な経営をしているということになる。しかしリーグ1試合平均
入場者数が約3500人ということを考えれば、現在はスポンサー収入が大きなウエイト
を占めているのは間違いないだろう。

 チーム運営費の内、選手の年俸も含めた人件費が約3分の1。チームの方針が、株主に
頼らずに独立採算を目指すということから、 決められた予算内で様々な努力をしているよ
うだ。選手の中には東京ガスから出向という形(社員選手という形をとるかどうかの選択
は選手自身に任せている)を取っている者もいる。また経費節減の面から、ユニホームの
洗濯は選手自らが行っているとのことである。

 今年チームはJ1昇格に伴い、15億の運営費を考えている。もちろんJ1で戦う為の
選手補強費が、昨年以上にかけられている。 その上、他のチームと違い、都内に深川グラ
ウンド以外の練習場とその芝の整備を含めた 施設面の充実を計らなければならないことも
あり、経営サイドそのバランスを調整することに、苦労されているようだ。現時点の収入
見込みが目標額に到達していないので、チームは営業に更なる努力をしているとのことで
ある。
 私はその話を聞き、これが本来あるべきクラブ経営なのではないかと思う。また185
ある株主の中に特化したところはないが、名前を連ねている企業は優良企業ばかりで、恵
まれた状況にあると思う。2社の大株主の内、1社が撤退したことをきっかに、チームが
消滅してしまったフリューゲルスのことを考えると尚更だ。

 選手のことにしても、選手は自分のプレーの評価をお金に換算して「なんぼのもん」と
いう気持ちがあるが、例えプロと社員(Jリーグでの登録はあくまでプロ)という立場の
選手が混在していようと、ピッチの上で活躍さえしてくれれば、お金という面とは別で、
それはそれで問題ではないし、そういう形態があっても悪くないと思う。


 村林氏は「今シーズンの目標は優勝だと言いたいんだけどね、今年の目標は8位だと考
えているんだ。今シーズンはJ1でのチーム基盤を確かなものにしたいと考えている」と
いうようなことを話されていた。FC東京のサポーターにとっては、物足りない順位かも
しれない。しかしJ1に於いて、基盤が出来上がっている他チームの中に、今年初めて席
を置くFC東京にとって、将来優勝を目指すチームになる為には、J1でのチーム基盤を
築くことが、今一番に重要な課題ではないだろうか。

 私は身の丈に合った経営と同様に、基盤作りに対するチームの考えに、とても共感した
のだが、読者のみなさんはどう感じるのだろうか。