第29回 目指せ!?リバプール (2001年8月30日)

                                M.Sunabata

 ナビスコ杯2ndレグ、前半に2人の退場者を出し、数的不利を強いられながらも、粘り
のある守備とGK安藤の好セーブで後半45分を乗り切ったレッズであったが、延長前半
2分に鹿島・長谷川のヘディングに屈した。あれだけの死力を尽くした選手に対し、よく
やったと言うほかはない。

 ただ解せないのは、今日のゲームスタートの布陣である。なぜチッタ監督はワントップ
にし、中盤を厚くしたのであろうか。

 もちろん守備に比重を懸けて、あわよくば追加点をというのは、カップ戦で先勝したチ
ームの闘い方の一つではある。しかもエメルソンのスピードを活かした速攻をと考えてい
たことは、レッズがわざと相手陣内の深い位置からは守備をせず、鹿島のディフェンスラ
インを高めに上らせて、裏にスペースを作らせていたことからも伺えた。

 しかしレッズは守備が磐石なチームではない。しかもワントップのエメルソンがあんな
に中盤に下りてきてボールを貰おうとしては、フィニッシャーがいなくなってしまう。怪
我などの事情もあったかもしれないが、エメルソンにトゥットを組ませて、FW2人+中
盤の1人くらいで攻撃を仕掛ける方が、効果的だったのではないかと思う。

 チッタ監督は中盤で繋ぐサッカーがしたいという信念があるようだが、スピードと突破
力のあるFWが揃っているのであるから、それを利用しない手はないと思うのだが…


 そこで個人的には、こんなサッカーを参考にしてもらいたいというチームがある。それ
は先日のUEFAスーパー杯の時に見せた、リバプールの攻撃パターンである。
                           リバプール布陣

まずはリバプールの布陣を。フォーメーシ         へスキー オーウェン    
ョンは4−4−2。ただ2列目は左右に開い    リーセ       ジェーラード
た形となっていて、レッズとはそこが違う。      マカリスター ハマン
マカリスターが起点となって、長短のパスを  ギャラガー ヒーピア アンショス バベル
操っているが、トップ下と言われるゲームメ       ヴェスタフェルト (GK)
ーカータイプの選手はいない。

 カップ戦の際、やはり貰えるタイトルは取りたいという意識はあったが、シーズン突入
してすぐということもあって、怪我をすることと疲れを残すないよう気を使って、リバプ
ールは省エネサッカーを展開。

 サイドバックはオーバーラップするなどの攻撃参加は控え気味で、出来るだけリスクは
犯さないようにして、DF4人はディフェンスラインを崩さないようにしながら守備を深
めに取っていた。

 ボランチの役割は、ハマンが守備重視で短いつなぎのパスを出す側にまわり、マカリス
ターはハマンより少し高めの位置からロングパスを前線に配給し、FWのフォローと相手
ボールになって中央からバイエルンが攻めて来た場合は最初の砦となっている。


 この試合では、リバプールは中盤であまりボールを回すことはせず、DFからは直接ト
ップ目がけてのボールを多用。ボランチが絡んできた場合は、2通りの方法を取る。マカ
リスター経由で、中央・縦にFWを走らせる場合と、リーセないしジェラードのサイドに
開いた二人に早目にボールを送る。

 後者を選択した時、例えばジェラードにボールが入ったとしよう。ジェラードはボール
を受けた位置から、ドリブルであまり相手陣内に深入りせず、即アーリークロスを入れる
か、縦のスペースへボールを送る。

 もし縦のボールが入ったのであれば、バイエルンのディフェンスライン上にいるオーウ
ェンは、いわゆるウェーブの動きをして、ジェラードの前方のスペースに入る。ボールを
受けると、ドリブルで中に切れ込むことを選択した場合は、必ずシュートで終るようにす
る。縦突破を図ったならばセンタリング。へスキーが中央で待ち構え、リーセは前線に上
りフォアに詰める。へスキーも同じパターンでフォアは逆サイドのジェラードが上ってく
る。

 1点目はオーウェンの縦突破&センタリングからリーセがダイレクトで合わせての得点
だった。当然、中央にはへスキーがいた。

 さてFWに対して縦に入れたボールを相手に奪われたらどうするか。FWは敵をサイド
に追い詰めながら中を切る。サイドに開いた中盤がFWに連動して相手の縦を切る。バイ
エルンの選手は後方に戻すか、苦し紛れに浮き球を縦に出す。そのボールをボランチがイ
ンターセプトする。


 結局、この方法を取るとするなら、実際に前線に掛かる人数は3人である。

 リバプールのFWはスピードがあり、ドリブルで相手を抜くことを得意としており、同
タイプのFWがレッズにもいる。

 またロングボールを出すことが得手の鈴木がマカリスターの役を担い、石井ないし土橋
がハマンの代わりとなれるだろう。

 問題は、オフェンシブハーフをどう使っていくかであろう。リーセとジェラードはスタ
ミナはあるが、さぽど器用なボール扱いをする選手には見受けられなかった。ともすれば、
阿部の方がボール扱いの点では卓越しており、リバプールよりもオプションが増えるやも
しれない。


 だがこの闘い方はカップ戦用の戦術だったらしく、対ボルトン戦では、マカリスターは
前線にどんどん上って、浮かしたボールをライン後方に飛び出すFWの足元にピンポイン
トで出しているし、FWの二人もポストプレーをきっちりこなしている。また中盤ではビ
シッという音が聞こえそうなくらい、強力で速いパス回しをしている。

 今のレッズの攻撃を見ていると、ボールをキープする時間は伸びているが、判断スピー
ドが遅い為に、悪戯にボールを回している状況に陥り、中途半端になって相手にボールを
奪われるケースが目にあまる。折角の速攻のチャンスも潰しがちだ。リバプールのカップ
戦の戦術をベースに置いた闘い方をするのも、結構フィットして面白いのではないだろう
か。ステップ・バイ・ステップで、リバプールのリーグ戦の闘い方に進化していけば、な
んの文句もないさ。