第30回  ゲームメーカーよりクロッサー (2001年9月27日)

                                 M.Sunabata

 某レッズ系のBBSでは、小野が抜けた後のゲームメーカー不在を嘆く書き込みをよく
見かける。

 ゲームメーカーと言っても様々ではあるのだが、2列目中央に位置してスルーパスを出
したりゴール前にドリブル侵入してDFの裏に浮き球のパスを送り込むタイプのゲームメ
ーカーは、世界の趨勢からは廃退している。そういったタイプのゲームメーカーとして思
いつくのは有名どころではルイ・コスタくらいのものだ。パルマの中田、マリノスの中村
などはこの部類に入る選手と言えるかもしれない。

 今の主流はボランチから左右にロングボールを振り分けてサイドからアタックするプレ
ーヤーを操るコントローラーの役割を担うタイプであったり、中央ではなくサイドからゲ
ームを組み立てるストイコビッチのようなタイプが増えている。

 今日のようなタイトな守備のプレッシングサッカーでは、2列目中央に位置するタイプ
のゲームメーカーは活かしにくい時代なのかもしれない。つまりゲームメーカーの役割は
直接にゴールに繋がるパサータイプというよりは、後方から上っていくサイドアタッカー
のチャンスメイクするパスを出すタイプや、プレッシャーの少ないサイドでプレー出来る
選手が重宝されていると言えるであろう。

 逆に特定のゲームメーカーを持たずとも、結果を出してチームが成り立っているクラブ
は少なくない。


 今のサッカーではゲームメーカーそれ自体よりもむしろ、中盤にしろサイドの選手であ
ろうと正確なクロスを上げる選手を保有することの方が必要なように思える。

 世界的に見て、素晴らしいクロスを上げる選手のいるチームは上位の成績を残している。
ベッカムのいるマンチェスターU、カフーのいるローマしかり。スペインリーグではどの
クラブでもクロスの精度は高く、ヨーロッパでもその実力が上位に付けるのも頷ける気が
する。

 日本でもJ1、J2に拘わらず上位に位置するチームを見ていると、ゲームメーカー云
々よりも、質の高いクロスを入れられる選手がいるということが直に成績に反映している
印象を受ける。

 例えばジュビロは、サイド攻撃が取り立てて得意なチームではないが、ショートパスを
繋ぎながら名波や藤田といった上質なクロスを上げる選手を中盤に揃えている。

 それに対して、アントラーズのビスマルクは激しいプレッシャーに晒されるとボランチ
位置まで降りて相手の当たりを避け、サイドバックにロングボールを送り出す。それを受
けた名良橋・アウグストの両サイドから早いクロスが入ってくる。

 前期のエスパルスではゲームメーカーの澤登の不在の試合が多かった。しかしそれに影
響を受けることがなかったのは、やはりアレックスや市川といった核となるクロッサーが
おり、得点に結びつくボールがゴール前に配給されているからに他ならない。

 今年好調のジェフに至っては、ゲームメーカーなど置いてはいないが、崔が前線で小ま
めにポジションを変え、ジュビロやアントラーズといったチームよりも多少質は劣っても、
その高さを活かすクロスをムイチンや両ウイングばかりではなく、攻撃参加したボランチ
やDFからも徹底して繰り返し行なえるところが強さの一因となっているように思う。

 今年見たJ2での試合でもその傾向は顕著で、前半戦に好調だった大宮は安藤と原崎と
いったクロスを得意とする選手を擁して、その精度の高さがバルデスの活躍を支えていた
し、この前観戦した新潟などは中盤のないサッカーで、すぐにサイドにボールを開くゲー
ム展開をしていたが、守備の陣形を崩さないことを念頭に置いて精度は低くても早目にク
ロスを入れることで攻守のバランスを上手く調整している。それ故にそこそこ得点を上げ
ながら、安定した守備で大崩れしないチームに仕上がっているように見受けられた。


 ところでクロスがなぜ重要かと言えば、DFにとってボールと選手を同一視野に入れに
くく、逆サイドの選手のチェックが甘くなって得点の機会が断然上るということだ。

 またアーリークロスの場合は、GKとDFとの間に入ってくる為、それぞれのポジショ
ン取りが曖昧になるので、攻める側の選手のマークも自然に甘くなることが多くなる。

 それに相手の守備が整っていない内にクロスを入れれば、DFは帰陣しながらの守備は
難しく、攻撃する方が有利に立つばかりか、時にはオウンゴールを誘発させることもある。

 更にウイングやサイドバックの選手が相手陣内浅い場所からクロスを配給すれば、敵に
ボールを取られたとしても守備にすぐ移行し易いので、危険負担も軽減することが出来る。


 さて最初のレッズの話に戻ろう。レッズの2トップを形成するトゥットとエメルソンの
起動力を活かすにはパサータイプのゲームメーカーが欲しいのは解らないでもない。しか
しそれがなくてもクロスの質の向上で結果を出すことが出来るはずだと考えている。

 だがレッズのクロス成功率はJ1ワースト。しかも山なりのクロスでは、あれでは相手
は対応が楽で仕方ない。

 中盤で華麗にパスを回すサッカーは見栄えがいい。でもそれでは今のレッズでは勝つこ
とは難しい。素早くサイドに回して、バックラインとGKの間が広がっている内にアーリ
ークロスを入れる。それにCKやFKも含めて鋭く・速く・低いクロスを入れることだ。
すぐにでもその練習を真剣にやるべきではないだろうか?レッズのサッカーは今年だけで
は終らないのだから。

 大いなるクロッサーさえいれば、レッズの上位進出は間違いない!?そう世界のサッカ
ーが語っているんだけどなぁ。