第33回  ミラクル・レッズ (2001.12.27)

                                 M.Sunabata

 アナウンサーはこう天気を予報した。「ニューヨーク快晴、ところにより紙吹雪」。ご
当地のニューヨーク・メッツがオリオールズを破ってワールドシリーズのチャンピオンに
輝いたことに、ニューヨークっ子らしい粋な言い回しをしたのだ。

 メッツは1962年に誕生した。だが同年に120敗という不名誉な大リーグ記録を打
ち立てるほど、弱小球団だった。メッツは「大リーグのお荷物」と陰口を叩かれるような、
情けないチーム。ところが、ジャイアンツ、ドジャースというチーム去ってしまい、ニュ
ーヨーカーは自然にメッツに愛着を示した。同じニューヨークに本拠地を持つヤンキース
があるのに、その頃の観客動員数はメッツの方が勝っていた。

 さしたる成績を残せず、球団創設7年目の68年もリーグ最下位。そんなメッツが翌年
にはリーグ優勝ばかりか、ワールドシリーズにも勝利したのだから、街こぞってメッツを
祝賀する紙吹雪が降り注いだ。

 Jリーグが誕生して、もう9年が経過しようとしている。Jリーグ初期からある10チ
ームの内、リーグステージ及びカップ戦で2位以内になったことがないのは、とうとうレ
ッズ1チームとなってしまった。それどころか、創設メンバーの中で唯一、J2降格さえ
経験している。

 93年、94年と断突の負け数で、「Jリーグのお荷物」と言われたレッズ。弱かろう
とJ2に落ちようと、一貫性のないチーム作りをするフロントに怒りを感じてはいても、
レッズを愛し続けることを辞められない、そんなおバカな人が大勢いる。そんなレッズジ
ャンキー達は今年、Jリーグ観客動員記録を塗り替えた。

 本年のレッズの最後の試合は、埼玉スタジアムで行なわれる天皇杯準決勝となった。相
手はセレッソ。レッズにとっては苦手チームとの対戦である。しかもホーム試合は分が良
くない。大概が1点差ゲームで、延長戦まで持ち込まれたりすれば、決まって森島にやら
れるってな具合で、いつも苦杯を舐める。

 昨年の天皇杯では、J2の水に染まったレッズを、セレッソのユンが手玉に取る活躍し
て、J1との間にある力の差を見せつけられたような屈辱感を味わされた。今年のリーグ
でも、古巣レッズに対する執念を燃やす大柴にいいように掻き回され、勝利することが出
来なかった。レッズサポーターからは、「レッズにいる時にあれぐらいやってろよ」とぼ
やきが零れた。

 それでも私には、来年の元日、赤く燃えるスタジアムに暖かな吹雪が舞い狂う、そんな
風景が見える。いや、見たい。ミラクルレッズの年よやってこい!ねぇ、サッカーの神様、
たまにはこうなってくれても、いいでしょ?