第39回   ガツンとガットゥーゾ  (2002.12.6)

                                 M.Sunabata

 ガットゥーゾと言えば、イケメン集団でW杯の話題をさらったイタリア代表のメンバー
であるが、イタリア代表のあのきらびやかな雰囲気からは一番遠い選手の一人でもある。
まぁ、ルックスの点では、不精髭でずんぐりむっくりなスタイルは、女性には敬遠される
部分もなきにしもあらず(でも案外、髭を剃ればカワイイとも思うんだが)それだけでな
く、ガットゥーゾのプレーそのものが、サッカーファンの心をくすぐる華々しさはない。

 そんなガットゥーゾがイタリア代表として、チームから重宝がられる理由は何か?チャ
ンピオンズリーグのACミランvsレアル・マドリッドを見ていて、改めてその重要さを感
じた。

 ガットゥーゾはファイタータイプの選手である。つまり相手にガチンコ勝負を挑んで、
その動きを封じるといった選手。そういったタイプの比較選手を挙げると、私的にはシー
ドルフ(インテル)やダービッツ(ユベントス)が思い浮かぶ。華やかさと同意になるボ
ール扱いの上手さとなると、シードルフ>ダービッツ>ガットゥーゾというのが、私の中
でのランク付けとなっている。

 それでもよくよくガットゥーゾのトラップや足裁きを見ていると、思うよりも遥かに上
手い。ボディーシェイプがいいので、逆に難しい体勢からパスを繰り出すこともなく、簡
単にボールを処理する場面が多くなる。それと同時に近くにいる味方への繋ぎのパス、し
かもきっちりと相手の足元に収まるようなボールを多様する。見る側には華麗さを感じな
いだけで、その実、本来サッカー選手として持つべき一番大切なこと、基本に忠実なプレ
ーが出来る選手であることが解る。

 そしてその魅力を存分に発揮する為、常にいいポジション取りが出来るように心掛けて
いる。ボールとゴールを視界から外さないようにクルクルと動き回る。相手ボールになり
チームのピンチとなると、ボールを持つ選手にアタックする方がいいのか、他の選手のカ
バーをしやすいポジションを取るのかの判断が、速くて効率がよい。更に抜群のスタミナ
を活かし、しつこいぐらいに相手に喰らいつく。ボディーコンタクトも屁のカッパと言わ
んばかりに、肉弾戦は厭ったりしない。

 往々にしてトリッキーなプレーが得意な選手は、周囲をアッと言わせるプレーを繰り出
すが、守備に忙殺されるのを嫌う。ガットゥーゾのような選手が側に控えているというだ
けで、守備への安心度は増す上、周囲の選手に奮い立つ気持ちを与える効果もある。手持
ちのカードとしてこういった選手を有する監督は、浮き沈みの少ないので計算も出来て便
利なことだろう。

 さて、日本に振り返ってみると、ガットゥーゾタイプの選手は輩出され難い環境にある。
フィジカル勝負に持ち込まれると弱さがある日本人にとって、そこに持ち込まれる前にパ
スを繋げることを指導する向きが強いからだ。トレセン制度から生まれ出てきた最近の若
手の多くが、スマートで足元の技術が突出した選手が多くなっている。そういった意味で
はガットゥーゾのようなファイタータイプは格下に見られがちな現状がある。だが基本技
術がしっかりしたファイタータイプの選手を誕生させる土壌作りも、大切なのではないだ
ろうか。それだけの価値をガットゥーゾは感じさせてくれる選手である。