ほろ酔いだけじゃ納得できねぇ〜

                                  砂畑 恵

 W杯で夢の決勝ラウンドを経験した余韻は、最早、「過去」へ。新たな冒険に満ちたジ
ーコジャパンの船出は始まろうとしていた。

 ホーム・国立にジャマイカを迎えての進水式。お互いの力を鑑みて、身体能力はジャマ
イカに分はあるが、技術・戦術を含めたチーム力では日本が上。新チームのスタートの相
手としては悪くない。

 私の望んでいた、いや、多くのサッカーファンが待ち焦がれていただろう、中盤のカル
テットが実現した。中田、中村、小野、稲本が同時にピッチに立つ。この中盤をジーコ、
ソクラテス、トニーニョ・セレーゾ、ファルカンが築いたブラジル「黄金の中盤」の日本
版としてなぞる人もいる位だ。

 その中盤が試合開始から6分を経過で、スタジアムにやって来た人達を酔わせた。小野
のパスを受けた中田が、左を駆け上る高原にボールを送る。高原は「逆サイドに振れ」と
いう中田の指示に従い、ゴール右をひた走る小野にサイドチェンジ。その小野がペナルテ
ィーエリア内に入ると直ぐにシュートを放った。電光石火のゴールにスタジアムは弾けた。
その後、多くのシュートがネットを揺らす想像を、人々に抱かせながら…

 中村はイタリアから初のお里帰りということもあり、気合いが空回りしてオーバーワー
ク気味だったが、それでも中田、中村、小野、そして稲本が絡むパスワークは見るものを
ワクワクさせ、心踊らせたには違いなかった。私をそう、処女航海の船にぶつけたシャン
パンのシャワーを浴びたような気分にさせた。

 シャンパンは、甘美な口当たりと心地よい酔いを誘う。けれどアペリティブでしかない。
発泡酒の宿命で、酒としては致命的に力強さが欠ける。まるで日本代表の中盤そのももの
だった。

 華麗なパスは楽しかったが、日本は畳みかける強さがないため追加点を挙げることが出
来ず、逆に後半34分にディフェンダーの連携ミスから得点を奪われ、ドローでゲームを終
了した。

 ほろ酔いのシャンパンでは納得するわけにはいかない。魂を揺さぶる本当のウエスケベ
(命の水)となるには、まだまだ中盤の選手も含めチーム全体の成熟度が足りないだろう。