第7回 群馬県サッカー協会長杯 準決勝

         第1試合 図南クラブvsザスパ草津
         第2試合 前橋商業vs群馬FCホリコシ


 今年、準々決勝に駒を進めた社会人3チームはいづれも将来Jリーグ入りを目指してい
る。そこに唯一、高校生で名乗りを挙げた前橋商業だが、こちらもJリーガーを輩出する
県切ってのサッカー名門校。
 その中で、J1でプレー経験のある選手を擁した図南クラブとザスパ草津の第1試合と、
比較的若い世代を中心とした群馬FCホリコシが前橋商業と第2試合にて激突。
 群馬県のサッカーをリードする4チームの闘いは、1500人の観衆を魅了した。


 第1試合

    意地と意地がぶつかった好ゲームをザスパ草津が征する
                             
砂畑 恵

 J1経験者がいるのも同じなら、掲げる最終目標が「Jリーグ入り」も同じという両チ
ーム。県内では、プロを意識した先駆者的な存在である図南クラブと、今年チームを立ち
挙げたばかりの後発・ザスパ草津。意地の突っ張り合いとなり、クリーンだが激しい応酬
となった試合を、ザスパ草津が征した。

 相手の出方を伺う様子を見せるザスパ草津に対し、図南クラブがいきなりカウンター
パンチをお見舞いする。森からパスを受けた沢田博が素早くセンタリングをゴール前に
送る。GK小島と鳥居塚の競り合いから零れたボールを清水がシュート。1度はGK小島に
防がれるも、リバウンドを清水が豪快に蹴り込む。開始わずか7分にゲームが動いた。

 その後は、激しい中盤での潰し合いが続き、両チームが一歩も引かないにらみ合いの
様相を呈したが、20分を過ぎた頃からお互いがシュートチャンスを演出。

 だが徐々にザスパ草津ペースとなり、図南が受け身に回る。前半27分、宮川のセンタ
リングにゴール前に控えていた堺がシュート。GK吉澤は至近距離のこのシュートを一旦
は止めるも、再び堺が押し込んだ。さらにチャンスが続く。前半38分には高須が小井土
を振り切り、GKと1対1の決定機が到来。ところが1対1の強さに定評のあるGK吉澤が高
須のシュートを弾き、今度はザスパ草津のゴールを阻止した。

 対する図南クラブも黙ってはいない。前半45分をまわっての反撃。清水のマイナスの
パスを川田が渾身を込めてシュートするも、GK小島がセーブ。その零れを麻生が拾う前
にDFがゴールラインに蹴り出した。このシーン、清水がタメを作った瞬間、ゴール前で
は森がニアに寄る動きをし、GKとしては視線が森に向い、その影から川田のシュートが
反対のサイドに飛んできた形になった。GKとしては逆を突かれる格好となるところを、
流石は元日本代表を思わせる、小島のナイスセーブであった。

 後半になると、図南クラブは立ち上がりに二井がシュートを放つが、それ以降はザス
パ草津の攻めに我慢の時間帯となった。ザスパ草津はセンターバック2人を残し、サイ
ドバックも攻撃参加する猛攻を加える。しかし図南クラブは前半苦しめられたザスパ草
津の2列目の飛び出しに対処を施し、ディフェンシブハーフの贄田がDFを良くカバーす
る。麻生、森といったFWも守備に積極的な関与をみせ、チーム全体の意思統一がみられ
た。

 その我慢の甲斐があって、後半25分にはまたも二井の惜しいヘディングシュートを皮
切りに、攻め疲れたザスパ草津からゲームの主導権を奪い返した。攻めに出る図南クラ
ブの盲点を、奥野のアントラーズで培った経験は見逃さなかった。

 奥野は高くなった図南クラブのディフェンスラインの裏に、自陣からロングフィード。
オフサイドラインを突破した宮川が素早くゴール前にセンタリングを送った。そのボール
にDFより一足先に飛び込んだ梁が左足でプッシュして逆転する。

 後がなくなった図南クラブは三浦、塚越といった攻撃的な選手と投入して1点を奪いに
いくが、後半44分にカウンターから3点目を奪われ、万事休す。丁々発止の好ゲームは、
3-1のスコアーでザスパ草津に軍配が上がった。


 第2試合

       大量失点で群馬FCホリコシに完敗も前商に光明
        
                       砂畑 恵

 多分、J入りを目指す3チームの中では、スピードとツボにはまった時の攻撃力では上
手をいくのではないかと思われる群馬FCホリコシ。その力を前商へ存分にみせつけ、大量
6得点を奪った。

 前商にすれば完敗と思えるゲームではあるが、スコアーでは推し量れない、光明が射し
た試合でもあった。

 試合前の予想は、群馬FCホリコシの優位は想像に堅くなかった。群馬FCホリコシは、関
東社会人リーグに所属し、フィジカル面、経験を通じても、やはり前商に不覚を取るよう
には思えない。

 前商側から言えば、どれだけ社会人相手に堪え忍ぶサッカーができ、それと同時に数少
ない得点チャンスをどう生かせるかが課題となる試合であろう。

 序盤から群馬FCホリコシの手にゲームは委ねられていた。特に中盤をダイヤモンド型に
構成する、清水・北原・菅野・木村のカルテットの早くてピッチを広く使ったパスワーク
に、前商イレブンはどうにか食い下がるといった展開になる。

 そんな中、群馬FCホリコシは得点チャンスを何度も逸し、実力が拮抗した相手であれば
決定力のなさを嘆きたくなるところであるが、2時からという1日でも暑い時間帯に始ま
ったゲームで、しかも効率の良い攻撃を仕掛けているのを見ていると、猫が小動物をいた
ぶるようにさえ思えるほどであった。

 守備に翻弄されながらも、要所を押えて得点を許さなかった前商に、とんでもないこと
が起きた。前半25分、3バックの左を担っていた神田が、思わずファウルを犯してしまっ
たのだ。先にもイエローカードを貰っていた神田にはレッドカードという厳しい判定が下
る。だがこの難局にも前商は冷静に対処した。トリプルボランチの一角である須藤をベン
チに下げ、センターバックに山田を投入。それまでセンターバックを務めていた高坂はボ
ランチ中央へ。更にボランチの真ん中だった飯島が左に移動し、FWの福田トップ下へと変
更となる。
 本来のポジションから多くの選手が移り変わったにも拘わらず、しかもその後も時間の
経過や交代によりポジションの移動を余儀なくされる場面でも、チームには混乱が起こる
どころか、強固な守備は揺るぎない。

 驚いたのは適応能力ばかりではない、例えばサイドバックの選手が外に引き出された場
合、2列目のアウトサイドがきっちりカバーに入り、群馬FCホリコシの中盤が前線に飛び
込んできた際には、ボランチのマークは怠りがない。ゴール前でのピンチに身体を張って
いるDFが抜かれても、トップ下の福田が戻ってきて、寸でのところクリアーする。ともか
く守備の約束事が浸透していることが見て取れる。

 じりじりし出したゲーム内容を群馬FCホリコシが動かしたのは、前半ロスタイム。菅野
のロビングボールをGK清水がキャッチしようとした。その鼻先で清水がダイビングヘッド
を仕掛けて先制。キャッチングに支障がなさそうに見えたのだが、恐らく飛び込むスピー
ドに高校生のタイミングとの微妙な差があったのではないかと思われる。GK清水とすれば
悔しい失点には違いないが、いい経験だったのではないだろうか。

 後半9分には群馬FCホリコシが加点し点差を広げる。井上のパスを受けた清水がグラン
ダーのボールをゴール前に。守備に戻った前商DFに当ってオウンゴールを誘った。

 だがそれでも前商は集中を切らさないで懸命に守りを堅め続ける。そして後半30分を目
前に控えた27分に3失点目。そこからは次々と3ゴールを喰らうが、高校生の大会ではあ
まり行なわれない45分ハーフの試合であり、一人少ない中、普段の40分ハーフのゲームで
言えば、胸突き八丁となる30分で力が尽きるのも無理からぬ事のように思えたのだが。

 ところが前商の選手はへこたれない。得点差はかなり開いてしまい、これ以上の失点も
もう変わりなどないと考えたのか、何が何でも1点をと燃えだしたのだ。そして途中出場
してから、群馬FCホリコシのバックラインの裏を再三狙い、オフサイドとなっていた戸部
が得点を挙げた。矢内のロングボールに勢い良く飛び出した戸部は、GK井坂のポジショニ
ングが高いと見るや、落ち着いてループシュートを沈めた。なんと後半45分のゴール。こ
の試合、一番大きな拍手が起こった。

 前商には6失点と手痛い洗礼ではあったかもしれない。けれど洗練された守備に自信を
持っていいだろう。攻撃に関しては、判断の早さが大人には及ばず、磨きを掛ける必要性
も感じたに違いない。彼らの見据える先は冬の高校サッカー選手権大会。今日の体験が、
高校生同士の闘いに生かされるかどうか、県予選が今から楽しみである。