第79回全国高校サッカー選手権大会群馬県決勝
              
(太田市総合公園陸上競技場)観衆 7500人 

             前橋商業高校3-1常磐高校
                   (2-1)
                   (1-0)
            前橋商業高校      常磐高校

            GK 1猪狩      GK 1竹内
            DF 5柳沢      DF20橋本
               2佐藤        2渡名喜
               4成田        18清水
            MF 7富沢(淳)     22小島
              13富沢(圭)   MF13想田
              11河部         3高梨
               8榊田       (15石井)
              10岡田       (23木佐木)
            FW 9竹渕         6大山
              17早川        (8岡田)
             (16茂呂田)      10山崎
             (15中野)     FW 9新川
              11飯塚
             (21平井)

                              

                                M.Sunabata

 群馬県の高校サッカーは、前橋商業高校(以下前商)と前橋育英高校の2強を中心に動
いている。しかし今年は、創部12年目の常磐高校(以下常磐)という新興勢力が台頭。
 その常磐と前商の決勝戦となった。本年の顔合わせは、高校総体とインターハイの県決
勝に続いて3度目。高校総体は前商、インターハイは常磐とタイトルを分け合っている。


 立ち上がりは両チームともボールが落ち着かず、前線に放り込む単調な攻めとなったが、
徐々にチームカラーが出始める。
 前商はウイング・快速の河部、テクニックある岡田の二人に素早くボールを展開し、サ
イド攻撃を仕掛ける。
 厳しいプレスが信条の常磐は、前商の攻撃の起点・榊田を早目に潰し、ボールを奪うと
ラインの浅い前商ディフェンスの背後を狙う。

 常磐のプレスの前に、ボールを支配しながらも攻めあぐねていた前商が前半20分に先制
する。コーナーキックから常磐DFのクリアーしたボールを河部が拾い、豪快なミドシュ
ートをゴールに叩き込んだ。その余韻が残る前半22分、前商がカウンターを仕掛ける。左
サイドをドリブル突破した榊田がマイナスのパス。フリーの岡田が追加点を挙げた。
 調子付いて2点差にした選手に気の緩みが生じるのを恐れた前商の奈良監督は、大きな
声で「集中しろ」と檄を飛ばした。だが喜びに沸く選手達には届かなかった。

 その2分後の前半24分、常磐が逆襲する。ディフェンスに戻っていたMFの山崎から前
線にロングボールが入る。前商の柳沢はヘディングで後方に流した。後ろに味方選手が残
っている。無難にタッチに逃れると見られた。だが常盤の飯塚がそれ鋭く反応する。カバ
ーに入ろうとするDFを振り切りセンタリング。ボールはGK猪狩に弾かれるも、詰めた
新川がゴールに押し込んだ。そのまま常磐ペースで前半が終了した。


 前半終わりに握ったペースを維持し、後半も常磐が攻勢を掛ける。大山に代えて岡田を
投入。その岡田が攻撃のリズムを作り、後半3分、岡田の縦パスに飯塚が抜け出る。どう
にか前商ディフェンスがCKに逃れる。CKはセットプレーの得点源・想田の頭にピタリ
合ったが、惜しくもゴール左に逸れていった。

 ペースを握っていた常磐だが、後半15分に前商のCKから柳沢にバー直撃のシュートを
浴びた。ここから常磐は点差を拡げられることを恐れたのか、チーム全体の押し上げが遅
くなり、前線と最終ラインが間延びしてくる。

 再びゲームの流れが傾いたのを嗅ぎ取った前商は、両ウイングとFWがうまく絡みなが
ら、果敢にサイドをドリブルで駆け上り、常磐DFを後退させた。そして後半34分ショー
トコーナーから柳沢が3点目をゲットした。

 常磐の間野監督は流れを変えようと、長身のスーパーサブ・木佐木を前線に投入。だが
楔のボールを落としても拾えず、コンパクトに保った前商ディフェンス網を破ることが出
 来ない。前商の手中に落ちたゲームの主導権を常磐選手が取り返すことはなかった。


 負けてしまった常磐だが、特段目立つ選手はいないものの、チームのモットー「全員守
備・全員攻撃」を遂行し、激しくもフェアな戦い振りが印象的であった。惜しむらくは、
バー直撃のシーンの後、2列目以降の押し上げを強気で出来なかったことだろう。

 そして勝った前商は、トップ下の榊田、快速ウイング河部、正確なCKを蹴る富沢(圭)
のプレーが光った。だが試合後のインタビューで、奈良監督は「今日の出来は最悪」と、
常磐の勢いに押されたチームの精神的弱さとプレー予測の甘さに言及していた。実力的に
は全国制覇が夢ではないチームだけに、それをどう修正してくるかが楽しみである。