全国高校サッカー選手権県決勝トーナメント

              前橋育英vs新島学園
(2列目がサイドに開いた4−4−2)              (中盤ダイヤモンド型4−4−2)

                                   砂畑 恵

 県サッカーの雄・前橋育英と、かっては日本代表選手を輩出した古豪・新島学園の対戦。

 結果からいうと7ー1で育英の圧勝であった。というのもフィジカル面だけ見ても、そ
の差はいかんもとし難いものがあった。筋肉の鎧を纏ったような育英の面々に対し、新島
の選手の痩身が余計に目立つ。まるで同じ高校生でありながら、風貌は一方はまるで大学
生で、他方は高校生になりたての生徒のように見える程。


 試合開始から育英が一方的に攻め立てる。しかし引いて守る新島が相手にスペースを与
えない。育英は手始めとばかりにミドルシュートを放つに留まっていた。

 新島はカウンターを仕掛けたいが、マイボールとしても、相手の素早い当たりに身体の
バランスを崩し、自陣深い位置で繰り返しボールを失ってしまう。前線へのパスは正確性
を欠き、例え繋げたとしても次への判断遅れが、ディフェンシブハーフの餌食になってい
た。

 前半14分、新島が攻撃に移ろうとしたところを育英がボールカット、パスを受けた大
谷昌が手薄になったゴール前にセンタリング。ゴール前にいた相川にDF2人が着いてい
たが体を寄せ切れず、相川は楽々ヘディングシュートを決めた。

 前半23分の育英の2点目ゴールはこの日一番美しいゴール。楔のボールを相川が落と
し、受けた大谷昌が前線にスルーパス。ディフェンダーの背後から飛び出した岡本がゴー
ルに流し込んだ。

 前半35分コーナーから相川がニアで併せて得点。後半1分はゴール前で須田・大谷昌
・相川と繋いで、最後は岡本のゴール。後半26分のゴールは左からのセンタリングを大
谷昌がカーブをかけたシュートでネットを揺らした。新島が一人少なくなった後半27分、
36分のゴールはともに、森、そして小川の個人技から生まれた。

 新島は成す術がなかったのかというとそうではない。後半1分の失点は、中盤とDFの
間が間延びしたことによるものだった。だがそれから後は、中盤とDFとの距離を密にし
て、ロングボールを多用する。育英は試合の終盤に差しかかると、攻撃に前掛かりとなる
分、帰陣が遅くなっていた。後半31分のゴールはロングボールを受けた鎌田が、DFの
裏を取る小林の動きに鋭く反応し、パスを頭にピタリと合わせたことによるものだった。


 育英の攻撃パターンは左から突破を図り、右に振ってそこからフィニッシュにする傾向
にある。右から突破することはほとんどなく、成功率が悪い。右で攻撃の仕上げを演出す
る大谷昌がマークされた場合の不安が残る。


 今日の試合で育英で目に付いた選手は、ディフェンシブハーフの大谷圭。とても当たり
に強く、読みのよい選手。DFを忠実にフォローし、とてもクレバーな印象を受けた。そ
れと相川。ゴールよりも、自分の体躯を最大限に活かした楔になる動きが素晴らしかった。

 負けてしまった新島ではGk高橋の動きが光った。身体的には大きくはないが、特に右
への反応がよくナイスセーブを連発していた。