全国高校サッカー選手権県決勝トーナメント準々決勝   

              前橋育英vs前橋高校
   
(2列目がサイドに開いた4−4−2)           (3−6−1)

 

 新島学園戦では実力の差を見せつけ、準々決勝に駒を進めた前橋育英であったが、堅守
を誇る前橋高校を相手に、前半は予想外の苦戦を強いられた。

 前橋は県内有数の進学校。インターハイ後には3年生は引退しており、1・2年生部員
でこの大会に臨んでいた。


 育英は前半9分に得たFKを浅川が直接決めて先制しとものの、その後はピリッとしな
い。自陣内でのパスミスが横行し、前橋のスペースを与えない堅い守りの前に、育英自慢
のパス回しが寸断される。

 前橋は早いサイドへのボール展開でゲームの流れを掌握し、左右から育英に揺さぶりを
かけた。前半22分には左ウイング小池栄が相手ボールをカット、ドリブルで縦に持ち込
んで、中央に構える松本にパスを送る。松本のシュートはダフリ気味だったが、前線に詰
めていた伊田に繋がり再びシュート。惜しくも枠を捉えなかった。前半27分には松本と
小池俊のワンツーから、素晴らしいオーバーラップを見せた右サイドバック・栗原にパス
が通ってセンタリングが上ったものの、中央には誰もいなかった。同29分には左に開い
た田口がセンタリングを上げる。前線には松本と伊田がいたが、もたつきながらも育英D
Fがクリアーでピンチを凌いだ。最大のチャンスは、前半32分の場面。小池俊が田口に
パスを出し、ドリブルでゴールエリアに向う。ゴール前では松本が相手DFを遮り、伊田
をフリーの状態にする。田口からパスを受けた伊田がシュートを放つが、カバーに入った
DFに阻止されてしまった。


 ハーフタイムに監督より厳しい喝を入れられたのか、後半の育英は見違えるほど立ち直
る。前半の終盤から時折、強風が吹くようになり、育英は風上に向っての攻撃となっても、
それをものともしない力強さがあった。

 育英は後半立ち上がりから前橋を猛攻に晒す。その起点となったのは須田。後半2分、
6分と須田の強気な仕掛けは、ゲームの主導権を前橋から育英に引き寄せた。その成果は、
後半15分に表れる。ボールを受けた須田はゴールに向ってドリブルを開始。GK岡村は
前にポジショニングを移す。須田が中に強いパスを送った。そのパスに反応したDFとG
Kは重なりあう形となり、オウンゴールを誘った。こうなると育英は伸び伸びとプレーを
し、後半23分にはドリブルでペナルティーエリアに侵入した大谷昌シュートを。DFが
一旦跳ね返したが、詰めていた相川が押し込む。後半34分には左からのセンタリングを
フリーになっていた交代出場の小川がバックヘッドでネットを揺らした。この得点は直前
に前橋が選手交代を行ない、ちょっとした隙に選手がマークの確認を怠ったのも原因だっ
た。


 終ってみれば4−0で育英が勝利を収めたが、育英にとってスコアーほどには楽なゲー
ムではなかったように思えた。

 パスミスを重ねた前半は、やはり育英が強豪といえども、高校生クラスだと波があるの
が感じられた。ただ育英が試合巧者であることがかいま見られたシーンもある。強風に煽
られてボールが押し戻されることを計算に入れ、普段ならゴールラインを割ってしまいそ
うなCKを、フォアのライン上で構えてボールに触れ、味方に繋いだりしている。状況に
応じた闘い方が出来ることに、感心したところもあった。

 ところで前橋は、後半に受け身に回ってしまった。特に攻撃に際立ったプレーを見せて
いた小池栄を活かすことが出来なかったのは残念。失点も大きく崩されたというよりは、
連携ミスやちょっとした気の緩みを育英に突かれた格好によるものだった。サッカーとは
その小さく見える差が、実は大きくゲームに反映するスポーツではある。だがこの点を修
正していけば、前橋は面白いチームになっていきそうな気がする。