第81回全国高校サッカー選手権 (会場 平塚競技場)

          前橋商業1(1‐0)1日章学園
                     (0‐1)
            

              前商の色を出せなかった日章戦

                                  砂畑 恵

 PKまで縺れた前商対日章。日章ラストキッカーのシュートが枠を逸れた瞬間、前商の
選手達は倒れながら抱き合った。まるで優勝したかのような爆発する歓びに、前商イレブ
ンの苦しみが滲み出ていた。

 前半23分に飯島のパスに日章DFラインの裏に大塚が飛び出した。GKと1対1の場面
で、臆せず放ったシュートが前商の先制点となる。

 この得点で前商が優位にゲームを運んだかというと、そうではなかった。前商と日章の
実力は伯仲しており、互角の攻防を繰り広げる。スピードに乗ったサイド攻撃が得意な両
チームは、前商の福田・小島と日章の下木屋・竹井のサイドアタッカーは、互いのチーム
のディフェンスに牽制され、効率よく攻めに絡むことが出来ない。

 前商の1トップの大塚は前線で孤立するシーンが目立つ。それと同じく日章も司令塔・
レフティー山下が前商のトリプルボランチとDF陣の連携した包囲網に、前を向くことも
ままならない。

 そこで日章は後半に入ると、ビルドアップの出来る鵜木から、単純にロングボールを前
線へ送る。ゲームをコントロール出来る山下を擁しながら、中盤を省略する戦法はもった
いない気もしたが、鵜木の正確なフィードは日章にリズムをもたらした。後半11分、スロ
ーインから始まった日章の攻撃。前線に上がってきた井上が豪快なミドルシュートでネッ
トを揺らして同点とした。

 その後は日章GK桑田、前商GK清水が勇気あるプレーでゴールマウスを死守し、どち
らも加点することなく90分を終了。PK戦に入っても互いが譲らず、前商は先行で5人全
員が決めて日章にプレッシャーを掛けた。その重圧に日章は負けた形となった。

 この試合の前商は得意のサイド攻撃を活かすことが出来なかった。初戦ということで、
慎重になったこともあろうが、福田も小島も深い位置からのドリブルを仕掛けた為、相手
に潰されることが多かった。そのことからも自分達のサッカーをしたとは言い難い。トル
プルボランチが安定した守りをしていたこともあり、アウトサイドから積極的に攻撃を見
せてもらいたい。

 明日は桐蔭戦が控えている。多々良との試合を見る限り、今大会注目の大型FW・阿部
は2ゴールと調子がよさそうだ。阿部は単なる点取り屋というだけでなく、パサーとして
の資質も高い器用な選手。その阿部にボールが回る前に、前商はボールをカットしたいと
ころ。特に阿部と2トップを組む渡辺は、シューターというよりチャンスメイクに心を砕
く黒子のような存在。またトップ下の松永も視野の広いパスセンスが光る。この2人は自
分を押し出すタイプではなさそうで、あくまで阿部を活かそうとする気持ちが強い。阿部
のマークは最重要課題ではあるが、その前に渡辺・松永の2人にボールが入った時点で厳
しいチェックに晒し、桐蔭の攻撃を寸断させてリズムを掴まえさせないようにしたい。