簡単、速く、そして正確に

                                  砂畑 恵

 桜は散ってしまったが、群馬に待ちに待った蹴春が訪れた。

 ザスパ草津との死闘の末、関東社会人リーグより群馬県社会人1部リーグへと降格して
しまった図南クラブ。今シーズンは図南SC群馬とクラブ名を変更し、再び関東社会人リー
グ昇格に向けて、新たな航海にチャレンジし始めた。

 第1節の対戦相手である高崎経済大学は、今シーズンに1部リーグ昇格を果したニュー
カマー。図南SC群馬とすれば、きっちりと勝って実力の差を見せつけたいところだ。

 だがこういう試合に限って、難しいものはない。高崎経済大は図南SC群馬との力の差を
しっかり見極めて、守りを固めてくるのが常道だからだ。


 案の定、図南SC群馬は相手陣内でほとんどの時間プレーすることとなるが、そう簡単に
はゴールを割れないでいた。高崎経済大ゴール前まではボールを運ぶものの、厚い壁の前
にその攻撃は跳ね返されてしまう。サイドから崩しにくるも、センタリングに精度を欠く。

 逆に、高崎経済大の送るカウンター気味のロングボールをワントップに繋がれてシュー
トまで持ち込まれてしまう。それでも図南SC群馬のDFが、相手の間合いでは勝負させて
はいなかったので、大事には至らなかったが、一つでも気を抜くと危険な状態であったに
は違いない。

 自分自身との我慢比べのような前半を過ごし、後半13分に森のゴールが決まると、チー
ム活気が漲った。後半19分には二井、清水と繋いだボールを塚越がシュートし、GKの弾
いたリバウンドを塚越が押し込んで2点目を奪い、後半28分には清水が駄目押し点を挙げ
て、3−0の快勝となった。


 結果的には実力の反映した得点差での勝利であったと言える。ただ問題は今後への影響
である。

 当然、これから先も相手が引いて守るという同じ展開のゲームが続くだろうということ
だ。今日のゲームでは先制点を奪って、最後まで落ち着いたゲーム運びが出来た。だが、
相手に先に得点された場合、同じように冷静な試合が出来るかである。後半立ち上がりか
ら最初の得点が決まった13分までの間、焦れて攻め急いだ部分もあり、反対に相手のペー
スにはまり込んだ節が伺えた。

 それとは別に、力がある故にボールのキープが出来てしまう。そのことでボールを持ち
過ぎてしまったり、プレーが雑になってしまうことだ。

 これは浦和レッズがJ2にいた時に感じたことなのだが、楽にボールが持てる分、一人
ひとりが次のプレー移るのに時間がかかってしまい、相手が露にした「瞬間的な隙」を見
逃して、絶好の機会を突くことが出来なくなってしまったりするのをよく見かけた。その
上、守備を固める相手に焦らされて雑なプレーに終始し、次第にレッズのサッカー大味な
ものとなって、昇格に苦労した覚えがある。

 いかに簡単に速くボールを捌くか、速いながらも正確なプレーをするか。これが今後の
課題ではないだろうか。それはプレーだけでなく「考える」ということでもスピーディー
さを追求しなくてはならない。相手に合わせるのではなく、常に上を意識したプレーを続
けてもらいたいものである。



 図南一口メモ

 この試合でのMVPは二井選手ではないかと思う。ディフェンシブハーフとして
相手の攻撃の芽を摘む地味な仕事をこなしながら、機を見た攻撃参加。頭打ちとな
りつつあった攻撃に息を吹き込んだプレー振りが光った。