ここでは、私が時計蒐集で感じた事などをつらつらとメモしています。
私が経験した事が、どなたかの参考になればと思います。


その1 スプリットセコンドの憂鬱

その2 良い時計職人の見分け方とOHの依頼の仕方

その3 OHの時期について(予告)

スプリットセコンドの憂鬱

私のコレクションはクロノグラフがメインだ。クロノグラフコレクターならやはり、スプリットセコンドが「あこがれ」というか「究極の1本」というか、コレクションに加えたいと思うのではないだろうか。
しか〜し、スプリットセコンドはほとんどが高価でなかなか手が出ない。
スプリットセコンドのストップウオッチなどで我慢していたがやはり腕時計がほしい。
そんな私は国内最安値の1本を購入することにした。

その時計はETAバルジュー7750系ベースのムーブメントで、新品で買える一番安いスプリットセコンドだった。
購入翌日には腕に嵌め喜んでいたが、しかしその日の内にいくつかの落胆する不具合が起こった。
まず、スプリットセコンドを止めたままにしておくと、時計が止まってしまったのだ。
時計雑誌の写真のようにスプリット針を2時位置・クロノ針を10時位置に止めて置いたのである。
ゼンマイを手で巻いてみたり、スプリット針をとめたままでクロノ針をうごかしたままにしたり、いろいろしたがスプリット針を止めて置くと時計が止まってしまう。

次に、スプリット解放し、先行するクロノ針に追い付く時に針が上手く戻らず、しばらくV字のまま運針し徐々に戻るようになってきた。これは購入時にお店では気付かなかったが、必ず発生するのではなくある条件でたまに起こるようだった。

またまた翌日に購入店に行き相談した結果、時計を返品させてもらった。数年前の出来事である。

今思うと、ちょっと酷なテストだったかな〜と思う。
スプリットセコンドを止めておくのはかなりのトルクをロスしているはずだし、スプリットを止めてクロノを動かしているときは特に、スプリットのハートカムの上をバネに押されたローラー?が押し付けられつつ回転しているからかなりのトルクロスだろう(たぶん)。
そのバネを強くすればトルクロスになって時計がとまる、弱くすればスプリット針の戻りが悪くなる、その両方がおこっていたようだ。不具合なく動かすには、絶妙の調整が必要になるだろうし、基礎ムーブメントの各部の抵抗を減らす仕上げや、ゼンマイをトルクの強いものに換える必要があるかもしれない。

余談だが雑誌「世界の腕時計」でセイコーがオリンピック公式計時を担当する試験での話しがあった。
今本が手元にないので記憶で書くが、完璧に調整したスプリットセコンドストップウオッチを試験に持ち込んだ。
試験の前になってスプリットが不調になった、同行した社員が調整したがなんとしても完全に直らない、
試験中に不調が起こらない可能性に賭けて、そのまま提出した。

というような内容だったと思う。
それほどスプリットは微妙で難しい物のようだ。

その後いくつかのスプリットセコンドを手にしたが(店頭で触らせてもらったり、自分のコレクション)不調であったり不調になりそうな物が多いように思う。スプリットセコンドの持病であろう。

私の経験では、スプリットの針の戻りが「ピシッ」と戻るより、「フワッ」と戻り一瞬ちょっと行き過ぎてまた戻る位のほうが良いように思う。普通のクロノならリセットハンマーがハートカムをたたいて帰零するので「ピシッ」と戻らないと問題だが、スプリットの戻りに関してのみハンマーではなくバネに押されたローラーなので柔らかく戻る方がスムーズに思う。

ちなみに某現行品のスプリットセコンドの説明書にはスプリットを止めたままにしないようにかいてあるらしい(こちら)


良い時計職人の見分け方(私なりのヒント)

時計をOHしてもらっても、素人の私にはその仕事の
善し悪しが今ひとつはっきりとは分かりません。
せいぜい外観や時計の精度位のものです。
手抜き作業でも取りあえず時間を会わせる事は可能のようですし、
頑張っても裏蓋を開けても、仕上げを眺める位です。
そんな私が自分の大切な時計を預ける時計師を
探してその腕を見極める事はほとんど不可能でしょう。
そこで今までの少ない経験の中で、ちょっとした目安を考えてみました。

1.机が見える位置にある事。
  お店の中でお客がいる所から修理している所・工房
  (机や旋盤、洗浄機)が見える場所にあること

2.顕微鏡を使っている事
  キズミ以外に顕微鏡を使っていること(ほとんどの方は双眼顕微鏡のようです。
  普段はキズミでも特定の作業の時は顕微鏡を使うようです。)

3.超音波洗浄機を使っている事
  これは私の希望です。
  個人の時計店ではほとんど使っていないと思います。
  1台100万円オーバーだそうです。

4.工房内でタバコを吸わない事
 これも希望です。お店に入って余りにもタバコ臭いと、OH依頼をためらいます。
 (タバコのけむりは細かいホコリです、時計内部に入るのは良くないと思います。
  しかし普通のホコリと比べれば、かなり細かいので機械式時計にはほとんど
  影響がないのかもしれません。
  クオーツには影響があるのではないでしょうか?)

5.年齢がちょうど良い事
 あまりご年輩では目も悪くなっている事が多く、手先もにぶると思います。
 また、若くて時計学校卒業したてでは、経験が足らないと思われます。
 これは一般論で例外もあります、時計学校卒業したてでも凄腕の方もいるし
 年輩の方でも細かい仕上げをする方がいらっしゃると思います。

6.直接会って話をする事
  やはり自分の目で確かめる事が大切です。上記の内容も
  お店に行かなければほとんど分かりません。
  人柄も大事でしょう、直接ご相談・お話をしましょう。

上記はあくまで私の個人的意見であり、単なる目安です。(しかも時計好きの素人です)
私が信頼しお願いしている時計店も、上記の条件全てに当てはまっているわけではありません。
参考程度にお考え下さい。思いつくままに書きました、修正加筆する事があります。

時計OHの依頼の仕方

1.買ったお店以外でOHする事
 機械式時計、特にビンテージ物は全ての時計のコンディションが違います。
 機械をばらしてみなければ分からないようなちょっとした不具合がある場合、
 その時計を販売した店ならば、自店の責任になるので報告してくれないかも
 しれません。
 また、見分け方でも書きましたが、時計師の技術を自分で評価することは
 ほとんど不可能なので、他の時計師に評価してもらう事にもなります。
 購入店以外でOHした場合は色々な情報を得られます。
 例えば「この時計をOHした人は上手だね〜、
 ほとんどキズを付けずに完璧に近い作業だよ」
 とか「この時計をOHした人はかなり熟練だね、
 この部分の油の差し方を見ればだいたいの 腕は分かる」
 とか 「この時計をOHした人はまだ経験が足らないね、
 油がほとんど流れてしまって 残ってないよ」
 とか、「ひどいOHだね、クロノグラフはこの石には油を差さないよ、
 ベタベタになってる、もしかして君が油を差したの?」とか

 良心的なお店ならば気にする事は無いのですが、
 色々な時計師・時計店があります。

  この時注意するのは他の時計店・時計士をあまり褒めない事、
 「どこどこはこんなサービスをしてくれた」とか「値段が安かった」
  とか間違っても言ってはいけません。
 「じゃーそこでやってもらえよ」なんてへそをまげてしまいます。
 相手の立場に立って考えれば分かる事です、良い人間関係を築きましょう。

 ちなみに、お店を持たない骨董市等の方がリスクが高いようです。

2.「オーバーホールして下さい」と言うのではなく
 「オーバーホールの必要はありますか?
 油はまだありますか?いくら位掛かりますか?(見積)」と聞く事
 時計店も商売です。油がまだ十分にあり、OHの必要が無くても
  「オーバーホールして下さい」 と言えば、受け付ける事があります。
  不要なOHは時計をいためます。
 見積を出さずに作業をする時計店に出会った事はありませんが、
 あらかじめ、だいたいの値段を把握しましょう。

こちらも私の個人的意見であり、参考です。
あまりうのみにしないで下さいね。
03.11.21加筆修正


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