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『天国の本屋〜恋火』

ゲスト:篠原哲雄監督、香川照之さん
篠原哲雄監督(以下、篠原)
どうも、篠原です。こんにちは。映画祭4回目で、去年は函館の映画祭のシナリオ大賞をきっかけに撮った「オー・ド・ヴィ」というのを
やらさせていただきまして、今年は新作の「天国の本屋〜恋火」というのをやって頂く事になりまして、毎年、本当に呼んで頂きまして、
ありがとうございます。
全くわからないのですが、なるべくネタバレしないように話していきたいなと思いますので、宜しくお願いします。
★それでは香川さん、お願いします。
香川照之さん(以下、香川)
「天国の本屋〜恋火」に出演しました香川照之です。こんにちは。篠原哲雄監督とようやくと言いますか、
やっと仕事がご一緒させていただく事が出来まして。昨年の8月〜9月と「天国の本屋〜恋火」を篠原哲雄監督が回しまして。
1年を経てこの伊参に、篠原監督のホームグラウンド“伊参”に戻って来て。
それと僕も篠原監督の映画に出させていただいたお陰と、ここで5年前に「独立少年合唱団」に出演できていたというお陰で、
伊参スタジオ映画祭に初めて来る事が出来ました。2本、自分の出演作をスクリーンで見ることができて今日は凄く嬉しいです。
見て頂きましてありがとうございます。
★
では早速ですが、篠原監督と香川さん、お仕事で沢山関わる事が多いようですが。最近、お二人でした一番新しいお仕事といえば?
篠原 アレですね(笑)。
香川 アレではわからないと思うんですけど(笑)。
篠原 香川さんの「キネ旬」のページでは、面白可笑しく書いて頂いてましたけど。
今、現物がないのが迂闊だったんですけど。実は、写真・・・。フォトブックみたいのをやりまして。
それは、ホンダのエリシオンという部品を作っている会社の宣伝用のもので。要は、短編小説なんですね。
家族の短編小説が宣伝に使われている。その小説を映画化ではなく、写真化したという。映画と同じように写真化したものが
映画のコマのようにいっぱい並べられてまして。それで小説の内容と照らし合わせると一つの家族の物語になっていると。
それで、お父さんに香川さん、お母さんに中島ひろ子さん。中島さんも「眠る男」で群馬と縁の人だと思うのですけど。あと子供。
子供は、これから見ていただく「天国の本屋〜恋火」の少年と、お姉さん。その4人が、とある田舎の方へ旅に出ると。
夫婦が分離していた家族が再生していくというような、簡単に言えば、そんなような物語を写真化して撮ったというのが
今年の5月位でしたよね?
香川 そうですね。写真とは言え、撮ったものは映画と何ら変わりがなくて。篠原さんは台本まで作って、セリフもあるわけですよ。
セリフも覚えて行って。普通に中島ひろ子ちゃんと会話をしているのを、横でただ写真をバシャバシャと撮って行くという。
僕としては「天国の本屋〜恋火」に続いて、もう1本篠原哲雄監督の映画に出させていただいたなと終わってから思った位、
あれは映画でしたね。
篠原 僕としては「よーい、スタート」と言わないと何か撮った気がしないんで。
香川 カメラのシャッターを押すのに「よーい、スタート」も何もないと思うんですけど(笑)。
篠原 セリフも言ってくれてるのに。その音も録りもしないのに(苦笑)。
・・・カメラ回そう!とか。回るわけじゃないのに。
香川 そう。カメラ押すものですからね(笑)。
篠原 そうですね。そういう、ちょっとへんてこな方法だったんですが。
結局、映画と同じように撮らないと、基本的には写真であろうと、そこには中島さんとの離れた夫婦二人がある約束をするまでの
5分なら、その5分のお芝居を一端は演じて頂いて。どのアングルで撮るか?と。それは35mmと普通のカメラとの違いだけであって。
香川 でも、とっても面白かったですよ。僕は、凄く。うん。
篠原 僕も面白かったですよ。写真撮ってるのに、映画と同じようなエネルギーだなという。
香川 疲れましたもん、だって(笑)。もの凄い夜中まで撮ってましたよ。早朝から毎日。
篠原 そんなに撮ってましたっけ?
香川 結構、撮ってましたよ。ずっと。なかなか終わらなかった記憶がありますね。大変だった。
篠原 なんか後半になって、そっか、これは映画じゃないんだと一瞬気付きまして。
その角度で止まった所で大体いいですんで、という所があったと思うんですけど。
あと、そこで一つ奇跡的な事が起きたんですけども。これは映画屋の意地みたいなもので。
この近くに内山峠という所が多分あると思うんですけど。その最終地点、車がたどり着く場所が内山峠の牧場、
内山牧場というのかな?そこで家族4人がある風景を見ていると。
最初、雨が降っていて、実はロケハンの時に、空のいい写真が撮れてたので、これは合成するしかないなと思いがあって。
人物だけで真っ白な空の下で、4人で自由芝居みたいにやってもらったのを一回撮って、しかし途中から雨が降ってしまって、
しょうがないからやめますかね?というのがありつつ。でも、やむかもしれないけど、寒いのでちょっと待っててくださいと。
何かあるかも知れないので・・・と言ったら、本当に何かあったんですよね?
香川 もうでも、日が暮れかけてたんですよね?18時半くらいになってて。もう、ダメだなあって。
この写真でいいのかなあ?って思っていたら。向こうの方がぱぁーっと切れてきて。
それがちょうど夕暮れだったものですから、斜めに入る夕陽がビーっと。雲がこう真っ赤になって。あれ20分くらいでしたよね?
篠原 そうですね。もう、それを撮り終えたら日が暮れたという状態で。
それは奇跡的なカットがその瞬間、撮った時に映画と同じようにやってて良かったなと。ある種の感動とういうか。
香川 あれ、最後はいい写真でしたよね?
篠原 いい写真だったと思いますよ。
香川 実物をお見せできないのが凄い残念なんですけど。10ページくらいの冊子になってて。
ホンダエリシオン、よかったら皆さん1台どうですか?
僕は運転、3日間ずっとしまくりましたけど、とってもいい車でしたよ。
篠原 そうですね。香川さんは、ずっと運転してて。僕はけん引車まで用意してやった覚えがあるし。
あと、小淵沢という所までずっと運転してもらってるのを、僕らが横で並走しながら撮ったり、後ろから撮ったり、前から撮ったりして。
香川 だから、結構恐かったですよ。すごい色々な事を要求されて。
篠原 たかが、それが10枚くらいの写真でしか表現されていないんですが。
その10枚撮るために、映画と同じようなことを・・・映画でもかえってあんな事しないですよね?
香川 そう。相当無駄が多かったと思いますよ。でも、それがやっぱいいですね。無駄な事に全力を尽くすというのが何でもいいですね。
篠原 そんな事が今年の仕事のひとつとしてありまして。
★
その冊子みたいなのは、ホンダの車やさんに行けばあるのですか?
篠原 そう。ホンダにあったんですが、部数が少なかったのか、早く売れちゃったみたいで。
・・・それで「天国の本屋〜恋火」ですよね?でも、事前なので出来るだけ喋る事はなるべく控えたいと思うのですが。
これ見た人どれくらいいますか?過半数だったら、話そうかって、さっき事前に決めたんですけど。
香川 ネタバレしない範囲で。
篠原 そう。基本的には僕は地方で撮る映画が好きなものですから。
北海道が舞台なのですが、これも何か映画祭というある種の縁かなと、ちょっと思っているんですけど。
元はといえば「月とキャベツ」が群馬の中之条をベースで撮ることが決まる以前に、「月とキャベツ」の原案「眠れない夜の終わり」を
書いた鶴間香さんという方が北海道の石狩の出身であって、その原案のシナリオを最初に読んだときの読後感というのは、
まさに北海道の話ではないか?という風に僕自身が思ったところから、川の設定がいくつかあったものですから、それは石狩川を見れば
何かヒントがあるのでは?と思って、石狩に実はシナリオハンティングに行きました。その結果、大変大きなヒントを得て帰ってきたのですが、
それは、例えば、塀に囲われてる家というのがあって。主人公の花火は塀に囲われているのはいいなと思って。
それは、単に風除が理由だというのが後で気付くんですが(浜が近いとかで、北海道では壁を作って家を守ると)それは一つのヒントになって。
全然違う考え方なんですが。で、色々あって北海道で出来ずに、ここ中之条に出会って栃窪にある廃校を見つけ、そこで撮影することに
なったのが「月とキャベツ」の経緯でして。それが、また数年後、石狩市でフィルムコミッションを立ち上げようとしている人たちがいて、
去年はその方達も映画祭に来ていたのですが、今年は石狩の方でもイベントがあって、ちょっと来れなかったんですが。
去年の3月に石狩でフィルムコミッションを立ち上げる為のイベントとして「月とキャベツ」を上映してくれて、そこで群馬で撮ったという話を
延々としまして。その時に石狩の町をプラプラと歩いていた時に、この町で「天国の本屋」を出来ないだろうか?とひらめいたと。
プロデューサーに北海道に行きたいんですけどと。北海道で撮ると小樽と石狩を中心に撮影することに至ったというような一つの経緯があって、
色んな所の因果というか、石狩と中之条がうまく結びついたという風に考えられるわけで、そうやって考えると映画って面白いなと思うわけで。
何故に、石狩で携わった人達が今年これないか?というと、翌々週に石狩で「天国の本屋」を上映しようという働きをしてて、
映画祭の因果のような話をしましたがー。北海道で石狩や小樽を中心に“天国”だけを本当は撮ろうかと思ったんですが。
香川さんが出るシーンというのは地上のシーンでありまして。天国と地上の世界観を最初は大きく変えようと思っていたので、
北海道で天国観を作り、東京で地上の世界観を作れば大分違うものだろう?と思ったんですが、実際にロケハンに行った時に、
映画を1本作るに当たって、合宿というのは凄く大事でして。竹内結子さんは2役なのですが、北海道(天国)で翔子という役をやり、
東京に帰ってきて地上の香奈子という役をやるという撮りかたをするよりは、北海道で地上もやってしまったほうが、我々制作チーム
としても俳優さん達にとっても、北海道の中で、東京の現実に引き戻されないで作れるのではないか?と。
そういう事を抱かせてくれるというか、そういう事によって映画は1本ちゃんと作って行くべきではないかな?と考え方を変えまして。
で、あるが故に天国と地上の世界がそんなに違わない物になってしまったような気もするのですが。
僕の中で、天国という世界は、地上にフィルターを一枚かけたようなところの向こうにある、もう一つの現実というような捉え方をしていたので。
今、思うに北海道で全部撮った事は、良かったなと思ったんですけども。なんかごめんなさい、一人でペラペラしゃべりまして。
★花火師役が香川照之さんという風に決まったのは?
篠原 これは台本を最初に作る段階で(原作があるんですけど)、これは香川照之さんしかいないだろうと僕らは思っていたんですよ。
それは、松竹の宮島プロデューサーという方と。原田芳雄さんと香川さんだけは最初からあったイメージなんですね。
原田さんは天国の本屋の店長をやってまして。「天国の本屋」は、どちらかというとファンタジーというような類の話になると思うんですけど、
普段、リアルな作品でちょっとくせの多い役で出る原田芳雄さんが、この作品に出てくれたというのは、非常に大きな力になると思うし、
香川さんがやってくれた役というのは、天才花火師ですね・・・。ある意味で。元・・・。
香川 元。挫折した人・・・。
篠原 その挫折感というのがどういう風に出るか?というのが、見る前にせめて言える話かなと。
香川 僕は、北海道で全編撮ってもらって凄く助かりましたね。もし、東京だったらああなってない。
僕は、小樽という町に入った瞬間に「おお、ここはいい!」と、思いまして。
次の朝、まだ撮影前なんですけど、小樽文学館というのかな?
篠原 文学館ありますね。はい。
香川 小林多喜二「蟹工船」を書いた・・・、あと、伊藤整。要するに革命の文学作家みたいな作家の文学館みたいなのを朝から見て。
その方々の書斎みたいな、レプリカみたいなのが再現してあるんですよ。そこで開いてる日に1日過ごしたんですね。
その内に、妙に瀧本という花火師の人物像みたいなのが出来たんですね。それで、現場に入って竹内さんとの空気で全て決まったという。
篠原 なんか、挫折した革命家が続いているんですね。その延長にあるんじゃないんですか?花火師というのは。
香川 (笑)。そうかもしれませんね。いい2本のカップリングかもしれませんね。
ご覧になって、皆さんわかると思うんですけど、竹内さんが、とてもステキでですね。
現場でも、とても不思議な空気の方でして。現場でも、監督が質問した事に5分くらい答えない方じゃなかったですか?
篠原 そういう時もありました。香川さんがいない時にそういう事もあったんですけど。
香川 多分、そうかなと思って。
篠原 時にですね。私は理解できない・・・と。自分の中で、何て答えていいかわからない時に、スっと
丘の上に上って行っちゃうんですけど。
ちゃんと説明して下さい」と、結構ムキになって言われた時が1回だけあって。
「困った。そこは、俺もわかんないんだよ(苦笑)」その時、自分もわかんないなりに説明したんだけど、「余計にわかんない!」と言われまして。
席を外そうかと。
「やばい、これは1時間くらい撮影が出来ないぞ」と思いながら、「ちょっと、出てくるから」と。
僕らが言う前にスタッフが休憩にしましょうと、言ってくれたのかもしれませんが、
それでも解らないと。
などと、いう事はたまにありましたが、基本的には、そういう事を何回か飛び越えると、非常にすんなりと・・・。
香川 それをね、スタッフもそうですけど、僕も横で見ていてね。ああ、そういう関係性なんだなという不思議さと。
竹内さんがフワフワっと草の上で、何かよくわからない時間を過ごしていらっしゃるんですよ。
それを見ていて、僕がね、瀧本という人物を通じて、横からもの凄いブローを入れたくなるんですよ(笑)。
それは、篠原監督と竹内さんとの関係性の中で、そこに支えられて作りあげられた役と思うんですよ。
ここから先は本当ネタバレになっちゃうんですけど。
こういう事だというのを全部表したいと最初から最後まで思っていたので。地上ということは、こういう事なんだと。
地に足を付けてやってるということは、こういう事もあるし、こういう挫折もあるし、こういう事なんだというのを全て竹内さんとの間に
ぶつけた感があるんですよね。
それは、監督と竹内さんとの微妙な会話が現場にあったからと思うんですよ。
それを含めて、僕の中では、ああ、小樽だったなと思うんですけど。
篠原 あそこのシーンは、とにかく色んな要素が映画にはあるんですが、この映画の中で、芝居の核はあそこ以外に
ないだろうというような香川さんと竹内さんの2人のシーンでですね。
実は、その臨場感を出す為にテストを1回しかやっていないシーンというのもあったりするんですが。
であるが故に、その2人のそこで生まれた空気というか、芝居が台本とは違うものをかもし出してる瞬間もあって。
実に、すごく印象に残るシーンなんですけどね。香川さんが出られた何シーンからの中の、ある一つのシーンは、
とても思い出深くはあるんですが、ちょっと今は言えませんが。見た人はどこのシーンか多分わかるかと思うんですが。終了・・・と。
★そうですね。終了、終了と。
香川 せっかく、乗ってきたとことですが(笑)。
★
そうですね。残念ですが、香川さんも帰りのお時間もあるので。最後に香川さんひと言。
香川 ずっと、この伊参スタジオ映画祭というのは、監督から聞いていて。先ず、ここで「月とキャベツ」が撮られたことを聞いた辺りから
凄く意識してまして。去年の9月の段階で、今年3回目があると。
いつか、ここに来られたらなあと、ずっと思ってましたので、こんなに早くこういう機会を頂けた事に本当
これから、またこの伊参で、きっといい映画が作られていくと思うんですね。またいつの日かそれに参加したいと思いますし、
ぜひ映画をいつまでも皆さんの力で押し上げていただいて、1本でも多く日本の映画に素晴らしい作品を残す、
そこの支えになって頂きたいと思います。
どうか伊参映画祭のスタッフの皆さま、必ずや、ずっと続けていただいて、10回、20回と歴史を重ねられる事を本当に望みます。
それには、篠原監督にもずっと撮り続けてもらわないといけないんですけどね。今日は、先ず第1回目の参加が出来た事を嬉しく思います。
では、ゆっくりご覧ください。「天国の本屋〜恋火」です。
★ありがとうございました。
■上映後/篠原哲雄監督トーク&質問コーナー
★では今日、最後の講演に入りたいと思います。この講演は篠原監督お一人で、先ほどの「天国の本屋〜恋火」のお話と
質問を中心に進めて参りたいと思います。それでは、篠原監督お願い致します。
篠原 どうも長い間ありがとうございます。こういう映画の後に出てくるのは、ちょっと恥ずかしいな(照笑)と、
今思っているんですけど。プログラムピクチャーとして楽しんでいただければ良かったかなと思ってます。
なんせウソ話なので、ファンタジーということで一つ許していただければと。一生懸命作ったんですけど。さっき香川照之さんと話しをしていて、
あのビンタのシーンというのは、今だから言えるのですけど〈あの男がなぜあの気持ちで花火を上げられる気持ちになれるか?〉というのが
とても大事な話になってくると思うんですけど、最初の台本では、竹内結子さんの役(香夏子)が言ってるのは、〈とにかく自分の身内の為に
花火を上げて欲しい〉というある種、勝手な思いで言ってる訳で。それは十何年前に捨てた事なんで、そんな事を言葉で言われても、
なかなか心の中に堪えないだろうなあというような事を香川さん(瀧本役)も言ってて。最初の台本の中では、どうしても言葉の押収でしか
ならなくて、僕も何とかして瀧本に花火を上げて欲しいなと色々考えつつ、結局殴っちゃった・・・。と、いうのがあの感じだったんですけど。
竹内さんは、本当は一発のはずだったんですけど、二発殴っちゃったりして・・・(笑)。
会場 (笑)
篠原 あれは現場でそのような形になりまして。でも、あの芝居がこの映画の中で核になっていると今でも思っているんですが。
もう一つ、さっきの話しの中で、竹内さんが暫くその役をやらなかったというシーンがあったという話をしたと思うんですけど。
それは「永遠」という曲を玉山鉄二(健太役)と作って、“永遠”という文字を書くシーンで。僕は、終盤の方、台本を自分で書いたものですから、
台本上のト書きは『“永遠”と書く』という風には簡単には書けるんですね。ところが、翔子役の竹内さんの気持ちの中では
〈曲が出来たことは、もちろん翔子さんにとっては嬉しいんですけど、“永遠”という文字が何で書けるのか?〉と。
〈そんな簡単に書けていいのか?〉という所がね。
芝居の流れでは〜曲が出来ました。じゃあ、“永遠”と書きます〜という流れで。でも〈どうしても納得出来ない〉というような事がありまして。
じゃあ、どうしたら書けるか?と。気持ちは色々説明出来るんですけどね。竹内さんも〈その事は解るんですけど、具体的な動きとして
私自身の気持ちでどうしても出来ないんです〉と。お互いに、俺もわかんないしな・・・と模索している中で、前のシーンで今までの9曲目の楽譜を
持って取り出すシーンのカットがあったんで〈ヒントは楽譜だな!〉というところが何となくありまして。
それで「何回かやってみようか?」と言ってる時に、竹内さん自身が楽譜を持ち出してきて。
それをペラペラめくってみたら、玉山くんが1から読み上げて行きまして、最後9の曲のタイトルまで読み終えた後に初めて、
玉山が〜“永遠”と言い〜、竹内が〜“永遠”と書く〜という芝居が成り立ったんですけど。実は、すごい簡単な事なんですけど、
そこのリアリティに対する拘り方が彼女の中で大きく引っかかっていたというか、僕も安易にト書きに書くのはよくないなとその時
思ったんですが(苦笑)。そんな話をさっき終わった後にしようかなと思ったのですが・・・。えーと、質問ですよね?
なにか皆さんの方から聞きたいことがあれば、僕の方では出来るだけ答えたいと思いますので。
★はい。どなたか・・・?皆さんの中で質問があれば手を挙げてください。
お客さん1 エンディング曲がユーミン(松任谷由実さん)の曲になったのは、音楽が松任谷正隆さんだったからですか?
それとも監督のリクエストで歌ってもらったのですか?
篠原 色々あるんですけども。これは最初にプロジェクトが成立した時に、松任谷由実さんが主題歌をやるという事が、
ほぼ決まっておりまして。音楽は正隆さんにやってもらおうという風に逆になってたんです。映画にとって主題歌のありなしというのは、
必ずしも作品に直接結びつくかというとそうでもなくて、但し、松任谷由実さんがやるということが、一つの大きな映画にとっての力に
なるんじゃないかというような所から始まりまして。当然、松任谷正隆さんが作曲するので、そうなってくると全体の組曲はどうするか?と、
組曲は当然、正隆さんにやってもらうという事になって。そこは、自分の方も要望もしましたし。松任谷由実さんの曲の中では、
私個人的に好きな曲がありまして(今ちょっと、ど忘れしちゃいましたけど)そんな風な曲でお願いしますというようなリクエストは
致しまして。はい。
お客さん1 私の個人的な見解で申し訳ないのですけど、私の世代だとエンディングでユーミンの曲がこういう風に流れますと、
「私をスキーに連れてって」だとか、そういうイメージで青春物のジャンルの映画だったのかという方向付けが勝手に自分の中で
出来てしまったので、お聞きしたかったんですけど。
篠原 まあ、青春映画の一端ということでですね。僕は「私をスキーに連れてって」の流れとは思っていないんですけど、
タブン、それ以来?。あまり覚えてないのですけど。まあ、過去は過去ですからね。
今、これが受けるのか?というのは自分でも半分わからない所ではありますが、映画に合ってればいいのではないか!というところで
やっておりました。
お客さん1 ありがとうございます。
★他に、どなたか質問ありますか?はい。じゃあ、そちらの・・・。
お客さん2 お疲れさまです。今の映画を見てて、目尻がうっとりしてしまったのですけど。
この物語で、天国の物語と地上の物語とで同時進行になってますよね。パラレルに。見ていて、さっきまで沈んでいた顔の竹内さんが、
いつの間にか浴衣を羽織っていたりだとその辺の切り替えの中で、実際に演じる時に、俳優さんは2役をしていましたが、
別の日にというか、期間を開けてやっていらっしゃったのでしょうか?演じわけが凄く面白いというか、本当に別人みたいだったのでビックリしましたが。
篠原 笑い方一つでもちょっと違うんですよね。口の歪み方とかね。それは、すごくうまいなと思って見ていたんですけど。
基本的には、天国の部分から先に撮って。髪型とかも全部変えるか?という話もしていたんですが、髪型を変える(長さを長くするとか、
短くするとか)というところに頼りたくないなということがあったので、もう芝居で行きましょうと最初から、話し合いでしていたんですけど。
とにかく本人も天国と地上は別がいいということで、天国から先に撮り、終わってから1〜2日開けて地上を撮り、また、一番最後に
翔子に戻ってもらったという感じです。それは、ピアノのシーンというのはやっぱりラストに撮りたいなということがありまして。
基本は、天国先、ちょっと間があって地上という形になってますけど、それははぶっ続けで。
お客さん2 なるほど。今の説明でとてもよくわかりました。エモーショナルな流れが凄く繋がっていて、とても心打たれました。
篠原 環境が変わることで彼女の周りもね。天国にいれば、閉じこもった人なので本屋に一度登場するんだけど、後は家の側で健太との
世界しかないのですけど、地上に行ったら周りに大倉君はいるわ、斉藤君はいるわ、吉田日出子さんはいるわ、香川京子さんはいるわで、
ワァーと全然違う環境だったので、私はこれは香奈子ね!という風に馴染んで行ったそうですね。
お客さん2 あと、すみません。もう一つ。ファッションが凄く印象的だったのですけど、これは監督の趣味ですか?
篠原 え?どこの部分で?
お客さん2 例えば、天国の部分で、原田芳雄さんとか、鰐淵さんとか、あとは、新井さん。
結構さりげない中で、衣装とか小物とか結構凝っていらっしゃると・・・。これは?
篠原 原作でヤマキはアロハを着ているという設定だったものですから、原田芳雄さんのはアロハの中から出来るだけ重たくないもの
という形で選んだんですね。それは、相当な数から選んだのですけど。あと鰐淵さんは、バーのママみたいな役で。
それは、僕の中で「オー・ド・ヴィ」の繋がりで、「オー・ド・ヴィ」でバーのママさんをやっているんですけど、「オー・ド・ヴィ」の中で死んじゃうんで、
その後は天国の本屋の世界で店を変えて登場したという意味がありまして。ウソですけど(笑)。
云わば、銀座に居たバーのママが天国に来たらどうなるか?みたいな感じで。
しかも、それはちょっと時代を遡るんですね。少年は戦争の時に死んでいるで、戦時中の格好をしたままで。
時代がその人が死んだ時のままひきずっているという設定でないとわかりずらいので。
天国の人は、サイケの格好のがいたりとか、ちょっとレトロなのがいたりとか。気をつけたのはあまりオンパレードにならないレベルで
時代色を感じるような衣装を着てもらうというようにはしていたんです。ただし、地上の人たちは、衣装合わせをしている中で、大倉くんの
キャラクターだったらこういう感じが似合うのかな?とか、いう風に決めていったと思うし。そういう感じだったんですかね。
香川照之さんのは変な寝巻きみたいな・・・、そこを聞かれるのかな?と思ったんですけど(笑)。
お客さん2 (笑)。それが、とても印象的だったのですが。
篠原 あれは、ちなみにスタイリストさんが数ある在庫の中から、こんな物があって・・・。と、それを香川さんが凄く気に入って。
「これ、いいね!」って。そしたら、一番大事なシーンで使われてしまったという。
「あんなトンマな格好で殴られていいのかよ(笑)」と、本人も言いながらさっき帰って行かれましたけど。
お客さん どうも、ありがとうございました。
★では、他に質問ありますか?最後の質問になります。はい、後ろから2番目のかたお願いします。
お客さん3 ロケの場所の事ですが、天国のロケハンで、北海道生まれの私としては一見してあれは北海道ロケだなと
わかる風景だったんですが、イメージとして他の所も色々考えて決めたのですか?
篠原 最初から北海道に行こうという事は、さっき前半のトークでもお話ししたのですが。北海道の中で何処を選ぶかというのは、
札幌から石狩・小樽近郊ですよね。札幌から動ける範囲の中で色々見ていきまして、旭川までも行ったんですけども。
なぜ小樽かというと最初は北海道の色々な町並みの中で、天国の街が、どこまで必要かな?といった時に、まだロケハン最中までは
決めてなかったんですが、健太(玉山鉄二)君が町を歩く一角にちょっと小さな公園があってですね。映画のシーンでも100年になったら
地上に帰る人のお祝いやっているあのお祭りをする場所、不思議な楽団がいたりする場所なんですけど。
あそこが普段日常に通った時にも、ちょっと不思議な感じがしたんですね。
バックにレンガの建物があって、本当に何気ない公園なんですけど、その色合いが僕にとって何か天国的な物に近づけられる
のではないかな?という。それはこっちの妄想みたいなものですけど、それが結びつきまして。それは他の町には無かったんですよ。
そういう雰囲気が。それで小樽を基点にしたいなと。観光地みたいな所は沢山あるんですけど全然そういう所には行かず。
ただただ普通にある公園から始まり、偶然なんですけど。天国の本屋の外観と中も含めて最初はリサーチしてたんですが、
実は、なかなかそれに見合う建物っていうのは、無かったんですね。それで外観だけは、江別という場所で探したある倉庫の裏側に
水時計みたいなのを作ったりとか、本屋の入り口のレンガの建物をちょっと突き出したりとか、外側の外観だけは設えまして。
中は、小樽でやるって決まってから、市のフィルムコミッションの力が大きかったんですが、小樽の倉庫を我々に貸してくれると。
その中に、でかいセットが立てられる事になりまして、うちの美術の小沢さんという人がセットの図面を書きまして。
その本屋のセットの中のイメージというのは、天国の端に行ったら、何か文明の始まりのような雰囲気が一つあった方がいいかな
ということで。あんなところに本当は池なんてないのですが、水が流れているとかそんなイメージがあったり、背景の紋様に
メソポタミアとかエジプト文明とかあの辺を連想させるような絵柄にしたりとかしながら、本屋は作っていったんですけど。
北海道の話から飛んでますが、そんな風に北海道で決めていったという過程であります。
★よろしいですか?はい。あのセットは小樽にあるんですよね?
篠原 今、あるんですかね?どうなんですか?野地さん。松竹のプロデューサーの野地さんが来ているんですけど・・・どうですか?
野地P あります。
篠原 まだある。まだあるそうです。本当は、映画が凄く売れたら第2部があるかもしれないという噂が最初あったんですけど、
どうやら“2”はなさそうなので(苦笑)。残念ながら・・・。ただセットはかなり立派なセットなので、小樽市が管理してて、多分来年の春くらい
まではあるんじゃないかな?と思うんですけどね。ただ、もし小樽でなくなってもどこかで保管したがってる人もいたりして。
そうやって残るといいなと思うんですけど。
★そうですね。伊参でも・・・。
篠原 この表に移築したりして(笑)。
★いいですね。この校庭にとか。中之条が管理してくれる事を期待したいと思いますけど(笑)。
では、そろそろお時間なので・・・。
篠原 そうですか。今日はどうもありがとうございました。明日は、シナリオ大賞の作品をやったりとか、
今年のシナリオ大賞の発表もしたりとか、お楽しみ映画というのもありますし。今日来ていただいた方も、
また明日も来ていただければと思います。今日は、ありがとうございました。
主催:伊参スタジオ映画祭実行委員会/共催:群馬県中之条町、上毛新聞社
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