転がりテストの巻


エコランカーの燃費向上において重要なポイントはいろいろあるが、中でも転がり性能は非常に重要である。
これについても評価してみたいと思った。
しかし、転がり性能の評価は、広い場所が無いとか、適当な測定機材を持っていないとか、いろいろと障壁があるのだ。
でも なんにも評価できないのもなんだし、駄目で元々、大したデータが取れなくてもいいから試しにやってみようという事で、 データ・ロガー(テープレコーダ)の使い方の練習も兼ねて、テストコース(田んぼの脇)で試験を行ないました。




方法
  • 調べたい速度領域まで加速して惰行状態に入る。加速はエンジンを使ってもいいし、押してもいい。
  • テープレコーダを録音状態にしておき、惰行状態に入ったら、速度計を見ながら数値を読み上げる。(コースが続く限り)
  • コースの長さに限りがあるので一回の測定で幅広い領域をカバーできないため、必要に応じて速度領域を変え、同様の事を繰り返す。
  • ストップウォッチを見ながらテープレコーダを再生し、速度と時間の関係をデータに書き落とす(これがちょっと大変)




試験 1

先ずは様子を見るために、1号車と2号車を手で押して加速し、速度推移を比較してみました。

グラフ1
  • それぞれ2回ずつ試験してみたが、データポイントの並びが重なり、まあまあの再現性がある。
    それなりに信頼性のあるデータが取れることがわかった。
    なんだ、データ・ロガー使えるじゃん。    後の集計が大変だけど。

  • 1号車と2号車の転がり性能が全然違う。
    試験時も転がりの差を感じていたが、データにすると差は歴然としてしまう。
    速度低下率にすると約2倍も違う。
    1秒あたりの速度低下
    1号車・・・0.241km/h
    2号車・・・0.121km/h

    やっぱミシュランはいいですね。 というより、1号車メチャクチャですね。
    1号車はタイヤが16インチで、後輪に荷重が掛かり過ぎてかなり潰れているし、その後輪は有り合わせのタイヤを使っているし。

    ちなみに、各車両の車輪の荷重分布はこんな感じです。
結果






試験 2

次に速度域を変えて2号車でデータを取ってみました。
1号車は都合によりお休みです。

グラフ2


  • 速度域を高くすると速度低下率が大きくなります。
    1秒あたりの速度低下・・・0.458km/h
    速度を上げたから空気抵抗が大きくなったんですね。
    速度がどんどん低下するので、走行時にメーターを読み上げるのも忙しいし、データに書き落とすのも忙しい。
    なにより、グラフの傾きが全然違います。
    上の二つのグラフを比較してほしい。グラフスケールは同じになるように表示しています。

  • 当然の事だけど、速度が高いと、すぐにコースの端まで達してしまうので、データが長く取れません。
    しかも、加速に費やす距離が増えるので、惰行の距離は短くなります。

速度がこれだけ急激に低下するのは抵抗が大きいからですが、この抵抗力の大きさを計算するには

F = m ・ a  ( F:抵抗力、m:質量、a加速度 )

の式にあてはめればいいわけです。
1秒あたり 0.458km/hの速度低下は、0.127m/s^2 のマイナス加速度で、質量は全重量ですから、 この場合 94kg を代入すれば・・・
F = 94 × 0.127 = 11.97N (= 1.22kg) 

あんがい抵抗って大きい値なんですね。




さらに
上で計算した抵抗力は、空気抵抗とタイヤの転がり抵抗の合計です。
空気抵抗は速度の2乗に比例し、タイヤの転がり抵抗は速度に関係なく一定とすれば、 試験1と試験2の結果を つかって連立方程式を立てることにより、空気抵抗と転がり抵抗を計算できてしまいます。  めんどうなのでスキップ

空気抵抗  Fa=9.8×Cd×S×ρ×V^2/2 Cd:空気抵抗係数、S:前面投影面積(m^2)
ρ:空気密度 0.125kg・s^2/m^4、 V:速度(m/s)
転がり抵抗 Fr=9.8×m×μ m:質量、 μ:転がり摩擦係数

この場合、転がり抵抗の中味は計算しないから式なんてどうでもいいけど、要するに速度に関係ないという事が言いたい。

結果2 → 40km/h付近の速度低下率 0.127 m/s^2 → 全抵抗F=94×0.127=11.97(N)

結果1 → 15km/h付近の速度低下率 0.034 m/s^2 → 全抵抗F=94×0.034= 3.15(N)

上の式を組み合わせると

40km/h付近の全抵抗… 9.8×Cd×S×0.125×(11.11)^2/2+Fr=11.97(N)
 (40km/h=11.11m/s)

15km/h付近の全抵抗… 9.8×Cd×S×0.125×( 4.17)^2/2+Fr= 3.15(N)
 (15km/h= 4.17m/s)

定数項を計算して

40km/h付近の全抵抗… 75.62×Cd×S + Fr =11.97(N)

15km/h付近の全抵抗… 10.63×Cd×S + Fr = 3.15(N)

上の式から下の式をひいてしまえば答えがでます。

64.98×Cd×S = 8.82

      Cd×S = 0.1357

Cd×S の値を上の式に代入すれば転がり抵抗力も出ます。

転がり抵抗 Fr=1.7(N)

車両の空気抵抗を評価するにはCd・Sで十分なのですが、この際だからCdまで計算してみます。
うちのクルマの形状は発泡スチロールのブロックからフィーリングで削り出して作っているので、正確な断面形状は 作った本人でもわかりません。
前面投影はだいたい0.35m^2くらいかな?

空気抵抗係数 Cd=0.388

あれ? ちょっと大きすぎやしないか・・・
計算間違っているのかな?
でも、12ニュートンの力で抵抗を受けている事に変わりないわけだし ・ ・ ・ いいか
それに、いままで聞いていた値と Cd も Fr もオーダーは変わってないし。

まあ、冴えない設計だな。

速度が低い領域ではタイヤの影響が大きいけど、速度が高くなると空気抵抗の影響が大きくなってくるから、 15km/h付近で結果の悪かった1号車は、40km/h付近では案外いいかも。
こんど1号車ショートクルーザーのも測定してみようか。

グラフ3


計算結果をもとに速度推移のカーブを求めると上のグラフのようになります。
精度については判断してください。上のやり方が基準ですので。
上で使った程度の計算式( あとは、仕事W=力F×距離L、の式くらいかな )を組み合わせればエクセルで描けるのですが、 説明するのが面倒なのでここでは省略します。


空気抵抗を語るときに、Cdの値しか出て来ない場合がたびたび見受けられますが、Cdだけでは意味がありません。
いくらCdが良くても前面投影面積が大きくては抵抗が大きくなるから。
車体が大きいほどプロポーション的に鋭い形が作りやすいので、なおさらCdだけでは意味が無い。
エコランカーは、できるだけ小さい前面投影面積にドライバーとパーツを押し込む、という事と、そのうえで空気の流れを スムーズにするという事が重要なので、Cdだけで評価しては駄目です。
比較する際にもCd×Sの値で考えないとね。



ずんぐり

つづく







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