キャブレターの液面レベルは、悩ましいものである。
実際に消費していなくても、燃料タンクから下がった分はレースにおいて使用したのと同じ事だからである。
レースの時、スタート前の燃料微調整をした後、キャブレターに余分に燃料が下がってしまうと、記録も下がって
しまうのだ。
この対策がバッチリできないと良い記録が出せません。
- キャブレターを揺らしてみた。
キャブレターにホースをつないで燃料タンクと接続し、これを手で持って揺らしてみた。
軽く上下に揺らしたらタンクのレベルが5CCくらい下がった。
もっと強く揺らしたら燃料がこぼれてきたが、このときのタンクのレベルは初期から11CCのマイナス。
実際の走行では燃料がキャブからこぼれるほど揺れないけど。
- 液面レベルの影響度
スーパーカブのキャブレターのフロート室の液面が1mm上昇した場合、フロートも1mm高くなると
考えると、フロート室の内径が47mmだから、1.7CCくらい余計に燃料が落ち込んだことになる。
1mmフロートレベルが変わる揺れの振幅は1mm? それとも倍の2mmくらいかしら?
ちょっと考え方は分からないけど、まあそんなレベルなのでしょうか。
そこまで揺らさないで走るのは不可能だよね。
というように考えると、静かに燃料を注入していってフロート位置を安定させた後、多少の振動を加えると、
かるく1CCくらいは燃料が落ち込んでしまうのではないでしょうか。
1000km/Lレベルの記録なら消費量は11CCくらいなので、1CCというのはかなり影響が大きい。
また、2002年の優勝チームだと消費量は5CC以下なので、1CCのロスはとんでもない値です。
- 実際の影響レベル
加速テストをしてみると、いつも1発目の消費量が多いのである。(加速テストの巻 もみてね)
エンジンを掛けて、燃料が少しずつ減るのを確認してからテストを開始し、2発目以降はアイドリングをせず
に、前の回の続きで加速後の燃料の残量を計る、というやり方に於いてである。
この試験で、1発目はいつも消費量が1CCくらい多いのだ。
自分なりに考えてみたのだが、1発目の消費量が多い理由は、停止しながらアイドリングした場合の液面レベルと、
エンジンを吹かして加速するときの液面レベルの安定する位置が違うからではないだろうか。
試しに、最初のアイドリングを暴走族のように吹かしてみた(普通アイドリングとは言わない)が、その傾向
は変わらなかった。
空吹かしの振動より、走行による振動の方が大きいということでしょうか。
車体の剛性が重要なのか、それともタイヤの偏心か、うちのクルマの場合どちらもバッチリとは言えない。
このやり方はレースと同じであるから、レースでの一発目もやはり消費量が多くなってしまう。
なんとかしたいものだ。
- 暖機
走行させる前に十分暖機をして、ヘッドの温度が70℃〜80℃にした方がエンジンの効率が良いと聞いた。
しかし、十分に暖機をした後エンジンを停めると だんだんキャブレターが熱くなり、キャブ側から燃料パイプの方へ
気泡が出てくるのだ。
レース前に十分暖機して効率を上げようとしても、コックの部分とストレーナーの部分が気泡で満たされて
しまったら損ではないか。
この部分はかなり容積ありますよ。しかも空気が抜け難いみたいです。
そこで、暖機後のキャブレターの温度推移を測ってみた。
横軸はエンジン停止後の時間、縦軸がキャブのボディの温度です。
マニホールドとキャブの間に、紙パッキンを入れた場合と、ベニヤの断熱材を入れた場合とを比較。
十分に暖機をしてからエンジンを停めると、だんだんキャブレターの温度が上昇してくる。
(実験ではエンジンのヘッドが110℃になってから停止した。)
なぜエンジンを停めてから温度が上昇するのかというと、エンジンを掛けている間は燃料の気化によりキャブレターの熱
が奪われているのだが、エンジンを停めると燃料の気化による冷却がなくなり、マニホールドから伝わってくる熱でキャ
ブレターがどんどん暖まってしまうのだ。
気泡発生領域というのは、ホースへの気泡の出方を観察した結果であり、実際はホースへ気泡が出る前から発生してるかもしれません。
ということで、キャブレターとマニホールドの間は十分に断熱しておかないとキャブレターが熱くなって、中で気泡が発生
してしまいます。
とりあえず、断熱をしておいて、空気の滞留しそうなコックとストレーナーは使わないようにしました。
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うちの場合マニホールドを逆向きにして使っていて、ノーマルカブの断熱の黒い樹脂部品(インシュレータ)
は付かないので、ベニヤの両面にFRPを積層した部品を付けてみました。 気密のため表面にシリコンを塗ってある。
上のグラフでは、これの断熱性を比較している。
ベニヤの方が樹脂より内部がスカスカで断熱性はいいんじゃないかと思う。比較試験はしてないけど。
ベニヤというと笑われそうだけど本気なのだ。
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- 燃料カットオフバルブ
エンジン停止後、振動により燃料が落ち込むのを防止するため燃料カットオフバルブを付けているチームが
多いらしい。
とりあえず、キャブの改造無しに付けられる流体用電磁バルブを燃料パイプの途中に取り付けてみた。
でも、これって最後にエンジンを停めてからゴールするまでの間しか意味無いみたいだけど、効果あるのかな?
エンジンを掛けながら加速しているときの振動と、惰力で転がっているときの振動を較べたら、最後のエンジン
停止からゴールまでの間には燃料の落ち込みは無いような気もするけど。
まあ保険と考えればいいか。
燃料パイプの途中にこのような物を取り付けたら、空気が溜まらないよう注意しなくてはね。
- その他
まあ この辺りの悩みを解決したいのならインジェクションなのかな?
別の方法として、ダイヤフラムキャブレターというのがある。
チェーンソー等、振動があったり、キャブレターの水平を保てない装置に使われるタイプだ。
カートにも使われるらしい。
でも調査不足なので、今期は使えそうもない。
だれか詳しい情報を知っていたら教えてください。
とりあえず、2003年仕様はこれで行こう。
- キャブの断熱(マニホールドからの熱に対し)
- ノーマルのコックとストレーナーを使用しない(バイパス穴の追加工)
- 燃料カットオフバルブ追加
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