EFI実験・・自走段階


初期実験では、自作の基板でエンジンが回るようになったが、それがどのくらいの性能なのかまるでわからない。
空ぶかしではスロットル全開にできないし、したところで何もわからないので、次の段階では走れるようにしてテストを行なう必要がある。

燃料噴射をいじるのは初めてで、電気の知識が無いためにEFI化は試行錯誤の連続。
それでもなんとか走れるようになりました。
走行テスト


1.ねらい
ウチの車両はマニュアルクラッチを使用するのを前提としているため、それに合った噴射の制御が必要であろう。
特に発進は、スロットルを操作しながらクラッチを微妙にミートしてやる必要があるため、専用のコントローラやスロットルが 必要になるのではないかと考えた。


2.システム
2−1.コントローラ
基本的にはTWY的EFIのつもりだが、噴射時間の設定が、始動用、アイドリング、中間(全開とアイドリングの間)、全開、 の4段階に切り替えられる。
TWYさんのシステムが、始動用、アイドリング、全開の3段階だったのに倣って、クラッチミート時のコントロール用に中間の 噴射量の設定も付加してみた。
しかし、最終的には4段階も切り替えは要らない、という考えになってきている。
2−2.スロットルボディー
スロットルを閉じたときの内部の空間ができるだけ小さくなるように設計してみた。これは初期実験でわかった内容を反映している。
ノズルは吸気ポートのすぐ上にあって、吸入口はサイドから。スロットル弁はプレート状のものをスライドさせる方式。
スロットル開度をフォトマイクロで検出して、噴射時間をきりかえるようになっている。
ただしこの設計は回転制御性重視なので、他の面で多少懸念事項はある。
2−3.ノズル
DI0 Z4用のものを使用
途中 わけがわからなくなってきたので、FCデザインの微小容量インジェクタINJ002 もテストしてみた。
2−4.燃料ポンプ
ホンダ DIO Z4のものを使用。遠心式のポンプである。
これにパイプを接続し、ガラスクロスを巻いてエポキシ樹脂で固めた。
レギュレータもDioZ4のものが一緒に埋め込んである。(赤矢印部分)
エンジンを掛けている間はポンプは回りっぱなしで、何の制御もしていません。
実際のDio Z4はどうやっているのだろう?
3.経過
何も知らない素人がやっているものだから、さんざんでした。
組みつけて初めからある程度走ることができたので、順調かと思いきや調子が良くない。
噴射の切り替えがうまくいっているのかどうかもイマイチわからない。
スロットル開度センサの位置と、どの調整つまみに運転状態が反応するのかを調べると一応切り替わっているみたいだが、 うまく作動しないときもある。
それにバッテリーの消耗が激しいみたいだ。
3端子レギュレータがすごく熱くなるときもある。
始動もイマイチ良くない。始動用の噴射に切り替えられているみたいだが、どこに合わせると適正なのかまるでわからない。
走ってみると燃料消費が多い。
噴射ガスが吸入口から漏れているのかとインテークチャンバーを付けてみたり、 気化が悪いのかとマニホールドを付けて延長してみたり、 噴射タイミングを変えたり、ノズルを別のタイプにしたり・・・。
噴射タイミングを検出しているフォトマイクロが何度も故障する。こんな部品が壊れるなんて聞いたことが無い。
不明な点が多いので、システムをどんどん簡略化していった。
4段切り替えのコントローラから初期実験で使用した1系統のコントローラに戻し、ポンプは一旦やめてタンク加圧式にし、 しまいにはスロットルボディーまで外して吸気口とノズルだけにしてみたりした。

などとスチャラカやりながら、いろいろな事が解ってきました。
こんな事は現在EFIを使っている人には常識なのだろうが、素人の私にはやっと解った事なのだ。


4.わかった事
4−1.クラッチミート・アクセル操作
マニュアルクラッチで発進する場合、クラッチミートの時にアクセル操作によりエンジン回転をコントロールしているのだが、 スロットル弁で空気を絞るだけで、噴射量は全開時に合わせたままで何ら問題は無かった。
空気だけ絞ってしまうと当然空燃比的には燃料が濃すぎるわけだが、回転が上がる途中の不安定な状態では少しくらい濃い方が いいような気がする。
ずっとその濃さのままだとカブってしまうかもしれないが、クラッチがつながり始めたらすぐに全開にしてしまうので、濃い状態 は発進時のほんの数秒だけの事なのだ。
したがって初期に考えた中間用の噴射量設定は、あまり必要性が感じられなくなった。
そして、回転制御性重視でスロットルボディーを設計したが、それもあまり必要ではないみたいである。 実際にやってみると、 少しくらい高い回転数でもクラッチミートするには問題無いし、アイドリングはあまり使わないから。
4−2.始動
いろいろがイマイチうまく行かなかったので、回路に自信のない4段切り替えのコントローラは一旦やめて、初期実験に使用した コントローラのポテンショメータだけ良くしたものに付け換えてテストをしていた。
この初期実験用に作ったコントローラは噴射量を全開時に合わせるだけなのだが、始動性がいいのだ。
スロットルを閉じた状態で始動しようとすると、空気は絞られているのに対し噴射量は全開の設定だから燃料が濃い。
だから適度にチョークしたみたいになっている。
したがって、始動用の噴射量設定は不要で、全開用の噴射をすればうまく始動してしまう。
そうなると、コントローラの噴射量設定は、全開用とアイドリング用が切り替えられれば事は足りるみたいなのだ。
因みに、FCデザインのコントローラもアイドリング用と全開用の2段切り替えである。
参考ページ(FCデザイン)

4−3.ノイズ
テストがなかなかうまく行かなかった大きな原因は、ノイズの影響であった。
噴射タイミングは、カムシャフトの延長状に取り付けた円板のスリットをフォトマイクロセンサで拾っているのだが、 なんと、円板無しでもエンジンが掛かってしまった。
スパークプラグ、プラグコード周辺から出るノイズがコントローラに影響して、1サイクルに2回も余計に噴射させていたのだ。
4−4.無効噴射期間
ノイズの影響で1サイクルに3回も噴射していたことを気付かずに調整していると、各々の噴射は実際の必要量の3分の1でなくてはならない。
ところが、噴射量を減らすために噴射パルスの幅を小さくしていくと噴射ノズルの動作が不安定になって、噴射しなくなる。
噴射パルスは、ある程度までしか短くできなかったのだ。・・・知らなかった。
ノズルを動作させるとカチカチと音が聞こえるのだが、Dio Z4のノズルの場合、噴射パルスが1.3msくらいで音が弱くなり、 1.1msで音がしなくなる。
たぶん1.4ms辺りから動きが怪しいのだろう。
アイドリングのときには噴射量を少なくするので、この無効噴射期間にひっかかってくる。
Dio Z4のノズルで1サイクルに3発も噴射すると、全開の設定でさえ無効噴射期間がネックになりそうなのだ。
全開時の噴射量の話になってくると、現在テスト中で結論が出ていないので、確かな事は言えないが。
4−5.インジェクター
初めはDio Z4のノズルを使っていたのだが、1サイクルに3発噴射しているのに気付かず、ずいぶん噴射量の多いノズルだなぁ と思い、 やっぱりFCデザインの微小容量インジェクタでなくては駄目かな? と、そちらも買ってテストしてみた。
FCデザインのインジェクタの噴射量を基準に考えたら、やっぱりコントローラがおかしいという事が分かり、1サイクルに3発噴射している のに気付いたのだ。
二つを比較してみると、一番大きな違いは、噴霧の状態だと思う。
Dio Z4の方は噴霧が広がるかんじなのに対し、FCデザインのINJ002は、勢い良く真っ直ぐ飛び出るのだ。
どちらがいいのかは分からない。
表中のDio Z4のノズルに関するデータは、私が測ったものである。
ノズルホンダ Dio Z4FCデザイン INJ002
流量(CC/min) at3kg/cm^23525
無効噴射期間(ms)1.31.0
噴射孔の数21
噴霧状態

勝手に引用しています。
画像をクリックすると引用元のページが開きます。
4−6.コンデンサ・抵抗
コントローラに使用しているICは、接続する抵抗とコンデンサによって噴射パルス幅を決定しているのだが、調整範囲を考慮して 決めなければならない。
また、この抵抗が1KΩ以上で使用しなくてはいけない。
この事は、ICの説明書に書いてあるのだが、まじめに読まないとトラブルの原因となる。
また、HIの信号を与えるための抵抗の選定や、ノイズ対策のコンデンサの使い方などが重要なのだが、知らないものだから苦労したのだ。
ノイズ対策については TWYの吉村さんにいろいろ教えていただいた。
これらの内容については、次回のEFIコントローラの巻で説明する予定。
4−7.フォトマイクロ
噴射タイミングの検出にフォトマイクロセンサを使用しているのだが、こいつが働かなくなる事が何回かあったのだ。
通常この部品は非常に信頼性が高くて、故障したという話を聞いた事がないというのに。
素人の私が作ったコントローラにマズいところがあったのかと思ったら、原因は油でした。
カムシャフト付近から飛び散った油がセンサ内部に浸透するとうまく作動しなくなるのだ。 故障ではなく、光の屈折が変わるから らしい。
アルコールで内部に入った油を洗い流したら復活した。
フォトマイクロセンサは、カムチェーンの無い側に取り付けるよう変更しておきました。
4−8.エアー抜き
実際にやってみると問題となるのがエアー抜きだ。
ポンプとノズルの間のパイプに空気が入ってしまったら、どうやって抜けばよいのだろう?
テストの時はあまり気にせずに、てきとうにやっているが、レースのときにパイプの中のエアーを抜いてください、と言われたら どうしよう?
運転前に、パイプの中のエアーを抜くための方法くらいはしっかり決めておきたいものである。
4−9.逆流防止
ポンプを起動するとタンクの液面が少し下がる。
きっと、配管内に少し残っている空気が圧縮されるのと、パイプが少し膨らむのが原因であろう。
そして、ポンプを停止するとタンクの液面が少し上がる
まずいじゃないか。
スタート前の燃料微調整のときにそんなのを見られたら、どうなっちゃうんだろう?
インチキしてるみたいに思われてしまう。 すくなくともタンクの液面が上がるのはまずいから、逆流防止はしておかないといけない。
4−10.エンジン停止
キャブレター方式の時は、エンジンを停止する際に、ロッカーアームをスライドさせて吸気弁を開かないようにし、点火を止め、 ドッグクラッチを切るようにしていて、これを1個のレバーで同時に行なっていた。
EFIの場合は、エンジン停止の時に、噴射を停止して、同時にドッグクラッチを切るようにしてみた。
噴射を止めるのだから、わざわざ吸気弁を止める必要も無いとおもったからだ。点火も止めていない。
ところが、実際にやってみると、停止レバーを引いてもすぐにエンジンは停止しない。 ポロポロと少し回り続ける。
ドッグクラッチは切れているのでエンジンは空回り状態。
吸気管内に残っている燃料で少し回っているのだ。
無駄じゃないか。
やはり吸気弁も止めるのか? それともエンジンが完全に停止してからドッグクラッチを切るようなシステムにするのか?
 


5.現在の状況
コントローラのノイズ対策をしたら まあまあまともな状態になり、現在は、そろそろデータを取れるかな? というところまで来た。 (コントローラは切り替え無しのタイプのままだが)
まだキャブレターのときより燃料消費がやや多い。
装置がまともに動作すれば、それだけで良い結果が出る事を期待したが、そうは甘くないみたいだ。
ここからが、エコランとしての検討が始まるのであり、これまでの段階は電気工作の素人による試行錯誤だったと言える。
  1. コントローラ
    噴射量調整は1系統なのでつまみは1個だけ。
    ノイズ対策でコンデンサとチョークコイルとアルミ箔のシールドを付けたが、何が一番効果有ったのかは、まだ調べきれていない。
    パルスカウンターも付けてみたが、まだうまく作動していない。
  2. スロットルボディー
  3. インテークチャンバー
    吸気口から噴射ガスが漏れ出すのを防止する目的だが、効果はまだわからない
  4. タンク加圧用に改造した栄養ドリンクのビン
  5. SMCレギュレータ
  6. ペットボトル(空気加圧用)
EFIは、揺らしても燃料の液面は変わらないので、加速テストでの燃料消費は1回毎のデータが安定している。
キャブレターのときは、加速時の燃料消費を調べるのに10回くらい試験して平均値を計算していたが、EFIだと1回の試験で 十分なくらいなのである。 それほど安定性が違う。
キャブレターだと燃料の濃さを調整するためにわざわざ分解しなくてはならないが、EFIだとつまみをひねるだけで出来てしまう。
それにキャブレターでは、思い切り燃料を絞ろうと思っても、そういうメインジェットを入手できない。
キャブレターだとスロットル開度や回転数などによって燃料の吸い込まれる量が変わるので運転中の状態が非常にわかりにくいが、 EFIだと噴射する量を自分で決められるので、考えに基づいて設定し、結果について考察しやすいのである。





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