材料力学


こんどは材料力学なのだ。
大学時代、流体力学と同様、材料力学もチンプンカンプンだったのだ。
入社試験(永久機関研究所ではない)のときの面接で、材料力学の問題を出されて全く答えられなかった。
でも当時は景気が良くて、人材確保のため合格してしまったのだが。

我がチームの2号車サーフライダーは、後輪が2輪で、それぞれの車軸は片持ち支持になっており、 その軸径は勘ピュータによりフィーリングで設計されている。
とりあえず現在まで問題は生じていないが、今後一流チームになるためには、その辺も押さえて おかなければならない、という事と、ちょっと心配なので計算してみました。

参考文献は、大学時代に使っていた教科書等です。

  • 日刊工業新聞社 発行
    山田敏郎 著
    材料力学 (昭和55年10月20日発行)

  • 日本機械学会編
    機械実用便覧 (昭和56年8月10日発行)

2号車サーフライダーの後輪部の構造は図のようになっており、軸受けからタイヤセンターまでの距離 が 68mmと割と大きい。 そして車軸の径は 15mmである。
これに対し、このタイヤに加わる荷重は約30kgなので、タイヤの分の重さを差し引くと車軸に加わる力は 29kgである。
車軸構造

・ 断面積 A = π×D^2/4 = 3.14×15^2/4 = 176.7〔mm^2〕
・ 断面係数 Z = π×D^3/32 = 3.14×15^3/32 = 331〔mm^3〕
円
・ 曲げモーメント M = W×L = 29〔kg〕×68〔mm〕 = 1972〔kg・mm〕 曲げモーメント
・ 最大曲げ応力 σ x  = M/Z = 1972〔kg・mm〕/331〔mm^3〕
            = 5.95〔kg/mm^2〕
応力分布
・ 剪断応力 τ xy  = W/A = 29〔kg〕/176.7〔mm^2〕 = 0.164〔kg/mm^2〕

曲げ応力と剪断応力を合成した主応力という値をもちいて計算したのが本当の強度です。
主応力はモールの応力円の作図によってもとめられるので、この場合をあてはめるとこんな感じかしら?
自信ないなぁ
まちがっていたら誰か教えてください。

実際は、シャフトを回転させてタイヤを駆動するので、シャフトには捻れの力が加わり、 さらには路面の凹凸によって振動が加わるので、それによる力を見積もるために、路面の凹凸を ある段差と仮定し、タイヤの外周の曲率と、段差に乗り上げる速度から上向きの加速度を割り出し、 その加速度と車両の質量から軸に加わる力を計算するが、タイヤの弾性力により、段差乗り上げの 際の加速度が緩和されるので・・・・
モールの応力円 正しい?
ああ わからない。

シャフトの材質は S45Cの焼きならし なので、その引っ張り強度は、 58kg/mm^2以上 である。

58〔kg/mm^2〕÷ 5.96〔kg/mm^2〕 = 9.7

とりあえず、車両を地面に置き、ドライバーが乗ったときの安全率は、 約9.7倍だ。
走っているときは知りません。



疲労強度も計算してみました。
但し、走行中の荷重はよく分からないので、静止荷重で車軸が回転した場合です。
疲労破壊とは、材料が繰り返し応力を受けると、外観上はほとんど何らの異状がみられず、ある応力 繰り返し数後に突然破壊したり、き裂が入ったりすることがある。この現象だそうです。

S−N曲線
縦軸に応力振幅、横軸に破壊までの応力繰り返し回数の対数をとって示した図がS−N曲線です。
2号車サーフライダーの車軸にあてはめてみると、走行により車軸が回転することで、先に計算した5.96kg/mm^2 が軸に対しプラス側、マイナス側から交互に加わる。
したがって、この場合の応力振幅 σ a =5.96kg/mm^2であり、平均応力 σ m =0kg/mm^2である。
永久に壊れないといえるのはS−N曲線が水平になるところの応力振幅以下の範囲。
10^7回または10^8回の繰り返し回数を指定して、そのときの応力振幅を疲労強度という。
左:応力振幅、 右:S−N曲線

永久に破壊しない事に対する安全率は次式で表され、各変数をあてはめて計算すると以下の結果になる。

安全率の試算

うーん 微妙・・・
この計算だと路面の振動は無視しちゃっているし、加速時のトルクによるねじれストレスも考慮していないし。
これらを考慮したら、安全率は1を下回るんじゃないかな?
安心してずっと壊れないと言えるには、安全率が2以上はほしいです。
各係数の取り方がイマイチわからなくて2通りの計算をしてみたけど、 上の表で安全率が1を下回っていたら、そーっと走っていても永久にはもたないって事です。



まとめ
  • ドライバーが乗って止まっているときの安全率は9.7だから壊れない。
  • 路面の振動が無視できるほど、そーっと走っても、疲労で壊れるかもしれない。
  • 路面の振動をバンバン受けながら走ったら、疲労でいつか壊れると思います。
”・・・かも” とか ”・・・と思います” とかハッキリしないまとめですけど。



よくレーシングカーの設計について、ゴールした直後に壊れるくらいがいいとか言う人がいるが、 これは疲労強度の事なのだ。
あまり丈夫に作ると重くなってしまい、運動性能が低下するので、レースディスタンスでは 壊れない程度に軽くして、性能を目一杯まで上げるのがいいという主旨である。
別の言い方なら、
作ったクルマを地面に置いたとたんに壊れるようでは使えないので駄目。
コースを数周走って壊れるようではリタイヤするから駄目。
ずっと壊れないほど丈夫だと重すぎて勝てないから駄目。
狙い目は、動的な強度としては十分な安全率を確保してあるが、疲労を考えた場合には永久に 壊れないだけの強度は有していないってとこ辺り。
S−N線図の10^7より手前で壊れる程度。
どのくらい手前かの加減が微妙なところでしょうね。
手前であるほど材料に加わる疲労が大きいけど、パーツは軽くなります。

ポルシェはレース毎に新車で臨んだというけれど、これも疲労強度を考えての事でしょう。

まあウチのクルマも永久に壊れないレベルではなかったので、レーシングカー並のシビアな 設計って事でしょうか。
(実際は勘ピュータだけど)
レーシングカーの話を出しましたが、やはり、ある程度安全に乗れる車両じゃないとね。
みなさんも強度には注意してください。
ちょっと走ってみて壊れないのと、疲労強度は違いますので。






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