




















この少年の墓碑から10mくらい離れたところに大島九さん(坂本九さん)の墓碑もあった。芸能人の乗った飛行機は落ちないというジンクスが破られた事故でもあった。「上を向いてあるこう(SUKIYAKI)」や「見上げてごらん夜の星を」など今でも歌い継がれる名曲を歌った方である。九ちゃんの墓碑に合唱し下山する。途中目に入る墓碑には頭を下げ、杖を頼りに1歩1歩下ってゆく。かなりの傾斜である。ここ数年スキーをやっていないが、スキー場で言う上級コースくらいの傾斜がある。こんな場所で救出活動したのかと関係者には頭が下がる。途中数箇所湧き水を利用した水道があり、遺族が墓碑に水を供えるために利用している。その湧き水は氷水のように冷たく、今が真夏だということを忘れさせてくれる。
学生時代、猪苗代のおばけペンションに肝試しに行き存在するかわからない霊魂におびえたものであるが、ここは520の霊魂が眠る地でありながら恐怖感は一切ない。遺族や関係者の手厚い供養で御霊は成仏されているに違いない。
小刻みに歩き、滑らないように気をつけて下山する。今度は登山者とすれ違うことが多く、「こんにちは」と挨拶を繰り返す。川のせせらぎが心をなごませ、見返り峠で尾根を振り返る。10年前はまだ山肌が見えたが、今はたくさんの木々が覆ってどこが現場かわからないほどになっている。当時のことを考えながら下山していると同じような道や神流川の源流にかかる登山者のために作られた小さい木橋を何度も渡り、無限ループに入っているのかと錯覚を覚えたとき、杖置き場が見えた。
汗だくになった服を着替え、ここに来たルートを逆走し家路に着く。途中のノイズが入ったラジオから郵政法案否決のニュースが入ってきて、衆議院解散・総選挙が濃厚となった。そんなくだらないことをやっている暇があったら、ここに来て心を洗い、今の日本に何が必要なのか真剣に考える政治をしてもらいたいものである。政治を批判するページではないので、これ以上何もいわない様にしよう。
10年ぶりの御巣鷹山は風貌も変わり、単独機世界最大の事故は風化しつつある。しかし、私は飛行機に乗るたびに事故を思い出し、安全を祈っている。墜落するとわかっている飛行機の中で30分間耐えることができるだろうか。非常に残酷なことである。
私は飛行機常用者として、群馬県民として生涯ここに安全を祈願し、ご冥福をお祈りします。昇魂の碑にメッセージを残してきましたのでご覧頂き、次回登山報告までといたします。
「520の精霊たちよ
わたしたちは決してあなたたちを忘れない。
空の安全はあなたたちに誓って
守られ続けなければならない。
空の安全を祈る会
2005年8月8日」