午前10:00登山開始。登山道入り口に地元の子供たちがメッセージを記入した杖が置いてあり、登山者は自由に利用できる。私も頑丈そうな1本を手に登り始める。始めは緩やかな登り坂である。10年前は一気に頂上まで登れた。今回も余裕と思っていたが、それは間違っていた。程なく急な登り坂が現れはじめ、昨日の夕立で地面は滑りやすくなっている。頂上まで1600m地点ですでに息切れしている。持参したペットボトルのお茶を飲み一休み。
おかしい、10年前と状態が違う。確かに年は取ったかもしれない、それに体重も増えている。私の体重からすると標準的な女性を一人背負って登山しているようなものである。きついはずだ。
心臓の鼓動が落ち着いてきたので登山を再開する。
このきつい登りは延々と続く。登山道は神流川(かんながわ)の源流に沿っており、川の流れや滝の音が耳を癒す。途中赤蛙、手足の長い蜘蛛、赤い飛蝗が私の登山を歓迎するかのように横切る。
 時間が早かったせいか下山者となかなかすれ違わなかったが、ようやく1組とすれ違う。狭い道なので下山者が、すれ違える場所で私が登るのを待っている。私は非常に苦しかったが、余裕の笑みを浮かべ「こんにちは、すみません」と声をかける。登山では上下山者がすれ違うとき必ず「こんにちは」と声をかける。これが登山のマナーと知ったのは10年前の同じ場所であった。
 中学時代の1500mダッシュ5本連続したときくらい息切れした時、中継小屋に到着した。ここからは事故現場に入る。以前はここで事故を起こした航空会社の社員が麦茶を配っていたが、今は誰も居ない。航空会社の意識まで風化してしまっているのか。事故命日の前後1週間くらいはここで気配りをするのが、事故を起こしてしまった航空会社としては当然の報いであろうが、だれもいない。
登山道入り口
杖置き場
やすらぎの滝
登山道の脇に工事中の新道。