プロフィールにも書いたように、私は卒業後に大学の顎口腔機能治療部という診療科に残りました。現在は顎顔面補綴学分野という講座になっていますが、要するに顎顔面補綴を専門に臨床および研究し、学位を取りました。また日本顎顔面補綴学会に所属し、認定医を取得しています。
顎補綴とは、様々な原因で歯だけでなく周辺の組織、すなわち上下の顎の骨や歯肉、舌などに欠損や変形が生じた患者さんに対する補綴治療のことです。その原因とは、主に口腔がんなどの悪性腫瘍、骨折などの外傷、そして唇顎口蓋裂などの奇形です。
歯のごく周辺の小さい欠損であれば通常の歯科治療で十分対応できますが、進行した口腔がんで大きく切除した場合、たとえば鼻の方に穴が開いてしまったり、下顎が変位してしまったり、様々な複雑かつ困難な問題が生じてきます。このような状態の症例に、補綴的な手法すなわち特殊な入れ歯や固定性のブリッジで対処します。そのため、通常の歯科治療とは若干異なる知識と技術とが必要になる場合があります。
写真は上顎の欠損に適用した顎義歯です。
当院では群馬大学医学部附属病院口腔外科および群馬県立がんセンター口腔外科、足利赤十字病院口腔外科から悪性腫瘍切除後の患者さん、また矯正歯科医からの唇顎口蓋裂の矯正治療後の患者さんの紹介を受け、毎年多くの症例を手がけています。
顎補綴の患者さんは通常上記の様な医療機関からのご紹介によりますが、ご自身で顎補綴で困られている患者さん、あるいは治療で困られている歯科医の先生がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。