欠損補綴の話 義歯編

パーシャル(部分入れ歯)とは

パーシャル(部分入れ歯)とは

 さて、次はパーシャル(部分入れ歯)についてお話していきましょう。「パーシャル」とは部分的という意味ですが、歯科においては部分床義歯という、いわゆる「部分入れ歯」のことを意味しています。

 部分入れ歯を入れる治療の対象となるのは、残っている歯の本数だけに注目すれば歯が「1本な無くなった」状態から歯が「1本しかない」状態まで、(つまり上下それぞれ1~13本)13通りです。しかし歯の配置を考えると、ほとんど数え切れない種類となります。そしてそれぞれの状態で望ましい解決法も異なります。
 さらに、歯の形や状態、すなわち大きさ、膨らみ、虫歯の有無、冠を被せたり詰めたりしていないか、歯茎が下がっているか否か、グラグラしていないか、等々による違いがあり、また歯のない部分(「顎提」といいます)の形、広さ、粘膜の厚さや硬さ、等々による違いがあり、要するに無限のヴァリエーションがあるということです。

パーシャル(部分入れ歯)の構造

 前述したように、一口に部分入れ歯と言っても千差万別で、どこから説明してよいのか迷います。まず共通する部品に分けることが出来るので、それを説明しましょう。
 まず失った歯の代わりになる「人工歯」、人工歯を支えるピンク色の「床(しょう)」、そして入れ歯が落ちないようにするための「維持装置」です。

 「人工歯」はまさにその名の通り、ヒトの実物の歯に似た形をした人工の歯です。ヒトの天然の歯は各個人によって大きさ、形、色など異なるので、人工歯も多くの種類があります。総義歯の場合かなり自由に歯を並べることが出来ますが、部分入れ歯の場合残っている歯に、見かけも機能的にも調和するように並べなければりません。

 「」はこの人工歯を支持し、また人工歯に伝わったかみ合わせの力を顎提(歯のないあごの部分)に伝えます。さらに歯を抜いたあとに減ってしまった歯茎の部分を補うことで、唇や頬を内側から支え、また口の中の余分な空間を埋めます。基本的には歯肉の色のアクリル樹脂で作られますが、骨格に金属を用いる場合もあります。

 「維持装置」はいわゆる入れ歯のバネで、装置全体が所定の位置にしっかり収まり、外れたり動いたりしないようにするものです。普通の部分入れ歯では、歯を表・裏から2本の「腕」で囲むような形のバネ(クラスプという)が用いられます。これは針金を曲げたり、金属を鋳造(鋳物の方法)して作ったりします。

 その他にアタッチメントという精密な部品や、コーヌスクローネといって二重にした冠を用いる場合もあります。いずれもただ歯に引っかかって入れ歯を落ちない様にするだけでなく、義歯にかかる様々な力を適切に残った歯に伝えることが重要です。
 どのような装置を用い、それをどう配置するかという設計は我々歯科医師の腕と頭の見せ所であり、それが義歯の作成当初の具合のみならず義歯と天然歯の寿命に大きく関わってきます。

 これら以外に、床や維持装置を連結する金属部分のパラタルバー(上顎)・リンガルバー(下顎)、フックやレスト等の補助的な維持装置など多種多様な部品を組み合わせて、部分入れ歯は出来ています。

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