欠損補綴の話 義歯編

総義歯の作り方3 -試適・装着-

義歯の試適

 咬み合わせを記録した後、あとは技工操作で人工歯を並べます(人工歯配列)。そのまま完成まで行ってしまう事も可能ですが、当院では「試適」というステップを踏みます。
 これはいわば洋服の仮縫いみたいなもので、ロウ義歯、すなわち赤いワックスの歯肉の上に人工歯を並べたものを患者さんの口の中に入れて、前歯の位置が曲がっていないか、歯並びは患者さんの希望に沿っているか、口唇や頬のふくらみ具合はどうか、かみ合わせは正しいか、などを患者さんの意見を聴きながら、また術者の視点で観察しながらチェックし、必要なら修正します。

 慎重に採ったはずの咬み合わせも、全く狂っている場合も時々あります。患者さんがご高齢であることや緊張のため、なかなか指示の様に顎を動かせないことも多く、また装置が総義歯の場合動いてしまいやすいことによります。試適のときに入れ歯の形になって初めて、適切に顎を動かせる場合もあるのです。そんな状況も、試適によってわかります。狂っている場合はもちろん、この段階でかみ合わせを採り直します。

 さて試適が済んだ後、ロウの部分をレジン(アクリル樹脂)に置き換えることで総義歯が完成します。ただ、患者さんに装着するまえに技工操作として、重合(アクリル樹脂を固めること)が終わったものを再度咬合器につけて細かい咬み合わせの調整をします。というのは、一連の技工操作、特に最後の重合の時、材料が収縮することによって歯の位置に必ず狂いが生じます。それをこの調整によって修正するのです。また大体並べてあった人工歯をしっかり咬み合わせ、また顎を動かした時にうまく運動できるように咬み合わせの面を微調整するのです。

義歯の装着・調整

 こうして出来上がった総義歯を、患者さんに装着することになりますが、その時も微調整は必要です。上下の顎に当たる面や咬み合わせの面等を入念に調整します。さらに患者さんに使っていただいた後も、必要ならば調整は続きます。
 ほんの少しの咬み合わせの不調、床の長すぎ、短すぎ、厚すぎ、また人工歯の位置などによって、使い勝手や患者さんの感じ方は大きく変わります。

 そして大切なのは、義歯は装着して終わりではないことです。義歯によって顎の骨に力が加わると、大なり小なり必ず顎は減っていきます。また義歯の人工歯もどうしても磨り減っていきます。そのため、最低半年に1度くらいは咬み合わせや適合のチェックをすることが望ましいのです。
 合っていない義歯を使用していると、ガタツキによって痛くなったり、さらに顎の減る量が大きくなったりします。少し合わなくなった義歯は、リベースといって口の中で義歯の裏側に樹脂を流して咬んでもらうことにより、合わせることも可能です。

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