さて、型を取ったら次は咬み合わせの記録をとります。これを「咬合採得」といいます。すなわち咬んだ時の上下の顎の正しい位置関係を記録することです。残っている歯がある程度多い補綴物ならば、その咬み合わせによって上下の顎はきちんと位置が決まります。しかしながら歯の数が減ってくると、だんだんと不安定になってくるのです。総義歯の場合は上下の顎の位置関係が不定であるのみならず、その空間中のどの位置に歯を並べたらよいかも全く自由になってしまいます。
そこで何かを目安にして歯並びと咬み合わせの位置を決めることになります。現在使っている義歯があればそれを目安にするのが最も安全な方法です。それが叶わない場合は、口腔内の解剖学的な目印、唇の周りの張り具合、顔の長さ、患者さんの感覚などを目安にします。
この咬合採得は、印象以上に患者さんの動きや感覚に左右されることが大きいため、難しいステップです。咬み合わせの高さ、すなわちどの程度上下の顎を近づけたときに歯があたるようにするかは、非常にあいまいです。したがって患者さんの許容範囲も比較的大きいのですが、それも個人差が大きく大変難しい場合もあります。左右前後の位置関係は結構シビアな範囲に収めなければいけないのですが、患者さんに顎を動かしてもらう作業なので、やはり狂いやすいといえます。