歯周病とプラークコントロール

歯磨きのタイミングと長さ

歯磨きのタイミングと長さ

 かつて歯磨きは、「1日3回3分間」というかけ声で言われていました。でもそれで本当によいのでしょうか。「歯磨きはプラークコントロールのためにするのだ」、ということをくどいくらいに書いてきました。でも、歯磨きで実際に落とすものはプラークだけではないのです。 
 プラークがたまってくるには時間が必要です。すなわち細菌が歯に付着し、まわりの栄養分を吸収し、分裂・増殖し、細菌の塊になってはじめて、「プラーク」というのです。したがって、できてしまったプラークではなく、プラークのもとである「たね」や「えさ」を取り除くことによっても、プラークコントロールをすることができるわけです。

 できてしまったプラークは、ネバネバ物質によって強力に歯に付着しているので、取り除くのが大変です。それに対し、プラークの「たね」やプラークの「えさ」を取り除くことは比較的容易です。
 プラークが成熟して悪さをはじめるには48時間程度が必要といわれているので、本当は2日に1度完璧に磨けば大丈夫なはずです。しかしこのように成熟して強力に付着したプラークを落とすよりも、回数を増やしてプラークの「もと」や「えさ」、できかけのプラークを落とすほうが、簡単で確実といえます。
 つまり、何かを口に入れるたびに食べかすを落とし、できるだけ多い回数歯磨きすれば良いわけですが、実際にはなかなか難しく、また磨きすぎの害も出てきます。したがって、現実には患者さんの口の中の状態とライフサイクルを考慮して、決めていく事になります。

 これを通常行なわれている歯磨きのサイクルに合わせて大まかに考えてみると、
 ・朝の歯磨き   : プラークの「たね」を落とす。
 ・食後の歯磨き  : プラークの「えさ」を落とす。
 ・寝る前の歯磨  : できたプラークを落とす。 ということになるでしょうか。以下具体的に見ていきましょう

朝の歯磨き

 朝の歯磨きは、前の晩取り残したプラークから就寝中に増殖した細菌を取り除くことが主な目的です。食事によって細菌のえさが入ってくる前に、菌数を減らしておこうという考えです。

食後の歯磨き

 食後の歯磨きは、プラークのえさとなる食べ物のかすや、唾液に溶けている糖分などの栄養分を取り除くことが主な目的です。そのためには簡単なブラッシングでもある程度効果があり、できないときは「ぶくぶくうがい」やお茶などの飲用でも多少の効果があるでしょう。

寝る前の歯磨き

 寝る前の歯磨きは、一日落としきれないで付着してしまった、あるいはできかけのプラークを落とすことが目的です。時間をかけて、特に食後の歯磨きでは届かなかったところを、丁寧にきちんと磨いてください。

食事を中心とした生活習慣全般を見直す

 これらの目的は実際にはきっちりと分けられるものではありませんが、歯磨きの主な目的を自覚することによって、より良いプラークコントロールができると思います。
 間食を含めて毎食後、および朝と就寝前の歯磨きを「全部」行なうことが理想ではありますが、実際にはなかなかできないことと思います。ですから、通常は就寝前に丁寧なプラークを落とすための歯磨きと、できれば1~2回の食後の簡単な歯磨きを行なっていただきたいと思います。また、重症の歯周病の患者さんには、間食を含めてできるだけすべての食後に丁寧なブラッシングを行なっていただきたいと思います。もっともこれには一日の生活習慣が深くかかわってきます。例えば毎日晩酌をしてそのまま寝てしまう人には寝る前のブラッシングは困難でしょう。また間食が多くいつも口の中に食物のある人も難しい。さらに仕事場で歯磨きできる環境にあるか、夜勤や交代勤務がないかなど、様々な要素があります。 したがって、食事を中心とした生活習慣全般について見直していかなければなりません。

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