このように何回も書いてくると、完璧なプラークコントロールへの道は険しいものであると思われたでしょう。歯や歯茎の健康は大変なことであると思われてしまったかもしれません。確かに効果的なブラッシングが気楽に簡単にできる、と安易に考えて頂くのは困ります。しかし、歯や歯茎が健康な方も大勢いらっしゃいます。人の体の回復力、病気に打ち勝とうとする力もまた強力なものなのです。
また逆に、これまであまり虫歯や歯周病と縁のなかった人は、正しいプラークコントロールができていると考えてよいのでしょうか。残念ながら、必ずしもそうとはいえないようです。患者さんを見ていると、お口の中がかなり汚れていても大丈夫な方もいれば、逆にずいぶん努力してきれいになっていてもどんどん虫歯や歯周病が進行してしまう方もいます。なぜそんな差があるでしょうか。
これは、プラークコントロールのレベル以外の条件に大きな違いがあることを示しています。その条件とは、もともと口の中に住み着いている細菌の種類の違い、唾液の質や分泌量の差、食べ物の種類や食べ方の習慣の違い、口呼吸の問題、免疫機能の問題、などです。これらによって、もともと虫歯や歯周病になる危険性に違いがあるのです。
では、これまで虫歯や歯周病にならなかった方はこれからもずっと大丈夫なのでしょうか。残念ながら、これらの条件は年齢や環境によって大きく変化します。例えば加齢やストレス、病気や薬物によって唾液の質や量は変わり、それによって抵抗力が急に落ちてしまう場合がままあります。やはりきちんとしたプラークコントロールの方法を習得して頂くことは、非常に大切なことなのです。