歯周病とプラークコントロール

プラークコントロールのまとめ

患者さんごとに異なるプラークコントロールの効果

 このように何回も書いてくると、完璧なプラークコントロールへの道は険しいものであると思われたでしょう。歯や歯茎の健康は大変なことであると思われてしまったかもしれません。確かに効果的なブラッシングが気楽に簡単にできる、と安易に考えて頂くのは困ります。しかし、歯や歯茎が健康な方も大勢いらっしゃいます。人の体の回復力、病気に打ち勝とうとする力もまた強力なものなのです。

 また逆に、これまであまり虫歯や歯周病と縁のなかった人は、正しいプラークコントロールができていると考えてよいのでしょうか。残念ながら、必ずしもそうとはいえないようです。患者さんを見ていると、お口の中がかなり汚れていても大丈夫な方もいれば、逆にずいぶん努力してきれいになっていてもどんどん虫歯や歯周病が進行してしまう方もいます。なぜそんな差があるでしょうか。
 これは、プラークコントロールのレベル以外の条件に大きな違いがあることを示しています。その条件とは、もともと口の中に住み着いている細菌の種類の違い、唾液の質や分泌量の差、食べ物の種類や食べ方の習慣の違い、口呼吸の問題、免疫機能の問題、などです。これらによって、もともと虫歯や歯周病になる危険性に違いがあるのです。

 では、これまで虫歯や歯周病にならなかった方はこれからもずっと大丈夫なのでしょうか。残念ながら、これらの条件は年齢や環境によって大きく変化します。例えば加齢やストレス、病気や薬物によって唾液の質や量は変わり、それによって抵抗力が急に落ちてしまう場合がままあります。やはりきちんとしたプラークコントロールの方法を習得して頂くことは、非常に大切なことなのです。

ブラッシング指導はオーダーメイド

 ブラッシング指導というと、決まった正しい磨き方をただ私たちが患者さんに教え込む、と思われるかもしれません。しかし、それですむなら何か本を読んだり、ビデオを見たりすれば済むはずです。 残念ながら、事はそんなに簡単ではありません。患者さんの口の内外の条件は、一人一人異なります。 たとえばまずは歯の形、大きさ、歯並びの状態、口の開き方などの解剖学的条件、手の器用・不器用、気短か気長か、丁寧かどうかなど性格的な問題、健康に対する関心の度合い、さらに、生活習慣や職業的な条件など、プラークコントロールの確立にかかわる要素は本当に多岐にわたります。したがって、その指導も患者さんひとりひとりに個別に対応しなければならないのです。すなわちブラッシング指導は、オーダーメイドなのです。

ブラッシング指導は共同作業

 とはいえ私たち指導する側も、これらの条件すべてを考慮し、適切に対応できるような能力、人格を持ち合わせているわけではありません。また保険医療機関として経営的にも成り立っていくためには、診療の時間や回数にも限界があります。しかし「縁あって」診療を担当させていただくことになった患者さんには、誠意を持ってできるだけの指導をさせていただきたいと思っています。そして指導とは、私たちが一方的に方法を押し付けるのではなく、患者さんとの共同作業で、最も適したブラッシングの方法と習慣を確立していくことだと思っています。ご自身の健康のために、積極的に指導に「参加」していただきたいと思います。

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