歯周病とプラークコントロール

歯磨き剤の働き、歯磨き剤の問題点、磨きすぎと磨き間違いの弊害

歯磨き剤について

 歯磨きといえば、歯磨き剤(歯磨き粉)が不可欠であるとお考えの方もあると思います。確かに朝の寝起きの歯磨きでは、口の中や、寝起きの頭をすっきりさせるために、歯磨き剤の味や香りの効果は大きいと思います。しかし歯磨き剤にも色々あり、またその効果にもよい事、悪い事があります。それをきちんと理解した上で使用したいものです。

歯磨剤の働き

 それではそもそも、歯磨剤はどのようなものでできているのでしょうか。スーパーやドラッグストアで、また歯科医院でも、多種類の歯磨材が売られていますが、特殊なものを除きその成分の基本的な構成は、1.研磨剤 2.界面活性剤 3.香料・嬌味剤 4.その他の薬用成分など、といえると思います。

研磨剤:  歯に付着したものを削り取るためのもので、身近なものでは台所で使う「クレンザー」などと同じものです。粒の大きさや硬さなどはできるだけ歯面を削らないように工夫されていますが、基本的には歯の表面をほんの少し削り取って汚れを落とすものです。タバコのヤニ取りなどをうたっている歯磨剤では、強力に歯を削ってしまうものもあります。

界面活性剤:  石鹸や合成洗剤の類で、要するに油分などの汚れを落としやすくするものです。口の中に入れるものですから、公式には安全なものが使われています。しかし、洗濯洗剤などに毒性があるように、合成界面活性剤には人体や口腔粘膜に害があるという人もいます。そのため、石鹸を使ったり界面活性剤不使用の歯磨材もあります。

香料・嬌味材: その他の有効成分の味や臭いを打ち消し、さらに使用時にさわやかな気分を演出するものです。ミントや子供用のバナナ、イチゴなどの味や香りが一般的ですが、最近では数十種類の味や香りのヴァリエーションを選択できるシリーズの歯磨き剤もあります。

フッ化物:  フッソは歯の表面のカルシウムと置換し、虫歯になりにくい物質にするとともに、若干の抗菌作用を発揮します。

キシリトール:糖の一種で、虫歯の原因菌であるミュータンス菌の増殖を抑えます。同時にさわやかな甘味もあり、嬌味剤の役割も果たします。

抗菌物質: 歯垢を作る細菌を殺したり、増殖を押さえるものですが、前述のように「歯垢(プラーク)=バイオフィルム」の状態になった細菌にはあまり効果がありません。しかし、歯磨き時にばらばらになった細菌を殺菌する効果はあります。したがって、抗菌成分を含んだ歯磨きを使っても歯垢に毛先が当たっていなければだめなのです。なお最近はバイオフィルムに浸透して効果を及ぼすと謳っている殺菌剤もあります。

 その他、いろいろ怪しい(?)ものが添加されているものもありますが、何を使われるかは自由だと思います。しかしその価格と効果とは比例するとは限らないと思います。歯磨剤の効果は、これらの有効成分によるものです。すなわち、着色などのしつこい汚れを研磨剤で落とし、食べかすなどでこびりつくものを界面活性剤で落とし易くし、薬効成分で歯垢を抑制したり歯面を強化したりします。

歯磨剤の問題点

 それでは歯磨剤の問題点は何でしょう。特に歯周病の治療・予防に対するブラッシングでは、プラークを丁寧に落とすことが求められます。その際研磨剤があると、必要以上に歯を削ってしまいがちです。特に歯周病が進行して歯根が露出しているような場合、歯根は比較的柔らかくどんどん削れてしまい、くさび状欠損や知覚過敏を起こし、極端な場合歯が折れる原因にもなってしまいます。
 また、歯磨材で泡立ったり辛かったりして長時間磨くことができない、或いはスッキリ感により、磨けている錯覚を起こしがちです。確かに歯磨剤の成分はそれなりの効果があるのですが、やはり毛先がプラークに届いていなければ歯垢は落ちません。また毛先がプラークに届いていれば、歯磨剤無しでも歯垢は落とせるのです。
 当院では原則的に、ブラッシングを練習している間は、磨けているかどうかが判断できるように、歯磨剤なしで磨いてもらいます。しかしそうするとどうしても歯の着色が目立ってくる場合、から磨きした後の仕上げに少しだけ歯磨剤を使用することをお勧めします。

磨きすぎと磨き間違いの弊害

 さて、これまでプラークコントロールの重要性を述べてきましたが、特に熱心な方に注意してほしいのが「磨きすぎ」です。
 まずは短期的な障害として、磨きすぎによる「磨き傷」があります。歯肉に傷ができると、痛くてきちんと磨けなくなり、余計に汚れてしまいます。また、磨くのも嫌になってしまうと思います。
 さらに長期的な障害として、歯肉が減ってしまうことがあります。その結果歯根が露出し、知覚過敏(しみる)や歯根の虫歯になりやすくなります。この場合、ポケットは深くならないものの、歯を支える組織(歯肉と歯槽骨)はやはり徐々に失われています。
 また、「間違い磨き」も歯や歯周組織にとって有害です。まず、歯磨きの目的の間違いがあります。歯磨きはあくまでも歯面に付着したプラークなどを除去するのが目的です。歯肉をこすってマッサージするのが目的ではありません。歯肉に過度に刺激を与えると、磨きすぎと同じような結果になります。
 また磨き方を間違えると、同じように歯肉を削ってしまったり、その割に歯は磨けていない、という結果をもたらします。いずれにしても、歯科医師や衛生士の指導に従って、正しく磨くことが重要です。

Copyright(c) 2013 Sample Inc. All Rights Reserved. Design by http://f-tpl.com